話す・聞く・食べるのプロ 言語聴覚士


言語聴覚士とは

言語聴覚士という職種を聞いたことがあるでしょうか?
一般の方には馴染みが薄いかもしれませんがリハビリの職種の1つです。
仕事内容はその名の通り、話すこと、聞くことに加えて食べることに関する専門家です。

「話す」、「聞く」、「表現する」、「食べる」ことは日常生活で当たり前のように、ごく自然に行っています。しかし、一度、病気や事故、加齢などで不自由になることがあると、とたんに社会生活が困難になります。
こういった方々の心強い味方が『言語聴覚士』です。

言語聴覚士はどこにいる?

言語聴覚士の方の働き場は病院、福祉施設などがあります。
病院では脳梗塞で発語や嚥下の機能が障害をうけ、リハビリを行う場面で活躍します。
私たちの在宅クリニックでも常勤の言語聴覚士がいます。在宅では特に食べることに関することが重要な仕事になります。

食べること

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食べることは欲求の中でも根源的なものものです。食べられなくなった時にどうするかは、本人・家族にとっては大きな問題です。

そのまま自然に任せて亡くなる看取りを選択するか、胃瘻や鼻からのチューブを入れて生活してゆくかの選択に迫られます。

比較的若い方で脳梗塞の後遺症によって一時的に食べられない状況であれば、訓練によって食べられるようになる可能性が十分にありますので、胃瘻や鼻のチューブ或いは中心静脈栄養といって体の心臓に近い所まで管を通して高栄養の点滴を行うなどして栄養を補いながらリハビリを行うことも良くあります。
因みに胃瘻は、一度作ってしまったら抜けない訳ではありません。使わなくなれば、抜いてしまえば、数日で自然に塞がります。

ところが、高齢者で全身状態が徐々に悪化してゆく中で、食事がとれなくなってきた場合には、たとえ一時的に栄養を外部から補っても普通に食べられるようにはなりません。
一旦、胃瘻や中心静脈栄養を始めてしまうと止めることが出来なくなるのです。

言語聴覚士の仕事

それで、本当にもう食べることが出来ないのか、食事の形態や食べ方を工夫することによってまだ口から食べることが出来るのではないかを判断することが重要になります。
この食べる能力がどの程度残っているかを評価して、適切な食事形態を考え、食べ方を指導する仕事を言語聴覚士が行っています。

誤嚥しても食べさせる?食べさせない?

食べ物や飲みものが胃ではなく胸に入ってしまうことを『誤嚥』といいます。誤嚥を起こすと肺炎となり、高齢者の場合は命取りにもなりかねません。

誤嚥の危険が高い場合には、肺炎になる可能性を充分理解した上で、口から食べることを優先するのか、そのような危険を避けるためにも、口からは食べさせないかが問題となります。

これは倫理的な問題です。正解はありません。本人と家族が何を大切に考えるかによって答えは変わります。

リスクを承知の上でどうしても本人が食べたい、家族が食べさせたいというのであれば、言語聴覚士が中心となり、誤嚥を極力しない方法で、肺炎予防のための口腔ケアを行いながら、場合によっては食べたものを吸引しながら食べさせることもあります。

ある患者の話

102歳の方で、食事に非常にこだわりのある患者とその家族の話です。

本人は認知症が進行しており寝たきりで会話もできず施設入所中でした。別の在宅クリニックが訪問診療していましたが、家族が誤嚥してもいいから食べさせたいと希望しても、危険があるために絶食の方が良いと聞き入れられなかったために、当院に変更となりました。

毎日、家族が作った手の込んだスープなどを。毎日、言語聴覚士が同席して食べさせました。食べる前後には吸引が必ず必要です。
約4ヶ月の間、毎日のように訪問し、そして、息をひきとられました。

「食べることは生きること」この家族がこだわったことです。最期は大満足されていました。

このこだわりに大きな支えとなったのは言語聴覚士の存在です。

言語聴覚士は心強い味方です。

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