最期の場所の選択


今日は、2年間『子宮体がん』で放射線治療や抗がん剤の治療を行なったものの、これ以上の積極的治療は困難とのことで家に戻り、訪問診療になった方の話です。

自宅退院後の様子

娘さんはサービス業の仕事をしていて、休みは不定期です。日中は、どうしてもご本人が一人になる時間が長くなります。3ヶ月ぶりに家に戻って来ましたが、しんどくて思うようには体が動かず、腹部の痛みも持続的にあります。

痛みに対しては医療用麻薬を使っていますが、依存を恐れて使用には消極的で、極力痛みを我慢しています。「適正に使用していれば依存になることはなく、痛みやしんどさを取るには有効です」と何度も説明しますが、なかなか聞き入れてくれません。
食事量は減っていて、一日の摂取量は300kcal程度です。残された時間は、もう数週間程度だと思われます。

「一人の時に何かあると不安があるので、病院に戻ろうかどうしようか」と本人が言います。

「残された時間はあまりないようです。いろいろな心配はまず置いておいて、最期をどこで過ごしたいですか」かと問うと「できれば自宅にいたい」と答えます。

家で過ごすには

「大切なのは本人の気持ちです。家にいたいのであれば、全力でサポートします。安心して過ごせるように一緒に考えましょう」とお話しして、次の3つを提案しました。

  • 不安の大きな原因となっている痛みやしんどさは、麻薬をしっかり使ってみる
  • 毎日誰かが必ず家に入るように、訪問診療と訪問看護、訪問マッサージなどの日程を調整する
  • 可能であれば、娘さんに介護休暇を取ってもらう

麻薬は、早速その場から増量しました。
今までは、余り多くの人が家に入ってくるのを快く思っていないようでしたが、毎日、誰かが家に入ることも了解されました。
娘さんの休暇については、1か月位ならお願いすれば可能とのことなので、取得時期を検討してもらうことになりました。

「死」の受け入れ

これまで母と娘は、共に死に向き合う事を避けていたように思います。自宅で「看取り」前提で退院はしたものの、具体的な実感が無かったのかもしれません。
今回のことで、残り時間をはっきりと意識されたようでした。

「最期はどこですごしたいのか」を叶えるには、迫り来る「死に向き合う」必要があります

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