訪問診療はアウェイゲーム


仕事をしていると色々なことが起こります。
在宅医の仕事は、患者宅にこちらから出向いて診療を行いますので、病院勤務では無かったことも多く起こるのです。

An imaginary stadium is modelled and rendered.

今日は、『在宅医あるある』のお話です。

ある夕方の往診依頼

ある女性患者の話です。本人も夫も精神疾患がある夫婦です。本人は寝たきりで夫が介護をしています。以前から何か異変があると、夫が直ぐに救急車を呼んでしまって、救急病院からこれまでの病状についての照会がくることが度々ありました。
ある夕方、「血圧が高い!」と介護者の夫から興奮気味に電話がありました。
それではと、往診に伺うと声を掛けても返事がありません。鍵はいつも開いていますので、中に入ると、患者である妻は寝ていて、その夫は不在でした。
妻に、「ご主夫から『血圧が高い』と連絡があって伺ったのですが」と言うと、「血圧が高いのはおとうちゃんや。病院に行ったよ」と言います。念のために、妻の血圧を測定しましたが、いつもと変わりありません。
往診にならない訪問でした。

診療所に戻るとしばらくしてから、その夫が時間外ですが「外来で診て欲しい」と診療所にやって来ました。近くの病院に行ったけれども、もう夕方だったので時間外という事で断られたようです。幸い大したことはなさそうでした。

ホームとアウェイ

この話以外にも、訪問したところ留守で、電話を掛けたら「訪問日を忘れて外出してしまった」と言われることは良くあります。こんな時はがっかりはしますが、腹を立てていては仕事になりません。

訪問診療は、患者さんのお宅に伺う仕事です。
患者さんにとっては「ホーム」であり、私たちにとっては「アウェイ」です。「ホーム」の都合に合わせる必要があります。
この点、病院では医者が「ホーム」で、患者が「アウェイ」ですので立場が逆転しています。

時にはヘコむこともありますが、気持ちを新たに次の訪問先に向かいます。

在宅医は「アウェイゲーム」のプロです

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