最期の場所は家から施設へ


今日は、9年前より『肝臓がん』の治療を受けていた、70歳代女性のお話しです。

iStock_000017050592Medium
1年前に『肝臓がん』の再発が見つかって、その時点で余命3ヶ月と宣告を受けました。自宅での療養が困難になった為に、同時期に施設入所され、そこから近くの開業医にしばらく通院していました。しかし、腹水と下腿浮腫が著明となり通院困難となったため4ヶ月前より訪問診療が開始されました。

初診時の希望

初めて伺った時には「20年前に義母が家で死にたいとの希望を叶えられず、病院で看取りとなった後悔がある為、自分の最期は家で迎えたい」とおっしゃいました。

家族

家族は夫と長男長女の4人家族で、長男は独身の引きこもり、長女は30年来の『統合失調症』を患っています。
夫は長男長女の食事と家事のため、昼間は自宅に戻り、夜は施設に泊まりにくる生活を続けています。

その後の経過

当初、腹水著明、下腿浮腫著明でしたが、利尿薬を調整することによって、徐々に腹部膨満、下腿浮腫は減少し、体の動きも軽くなってきました。心配された『肝癌』の進行も今のところは落ち着いています。

ただ、いつまでこの安定した状態が続くのかは不明で、突然容態悪化することも充分考えられます。
最期は家を希望されていた為、患者夫婦と施設職員を交えて面談を実施しました。

面談で

「状態は安定していますので、一旦家に戻るのはどうでしょう」と切り出したところ、
「いえ。今のように、たまに家に帰るのが良いのです」との返事でした。
現在は月に2回程度、1泊の外泊を繰り返しています。

家に帰ることに何か遠慮や不安があるのかと、色々と尋ねてもどうもそのような感じは無く、施設で生活を送ることを本心から希望しているようです。

「帰りたい」の希望が変化したのは?

話しているう内に明らかになったのは、入院から施設に移って今の生活になって【一人の良さ】に気づかれたようでした。家に帰れば、どうしても主婦として、あれこれ気になって動いてしまってしんどくなるようです。
また、施設内での知合いも増え、施設が居心地良くなっているようでした。

もう一つは、夫に対する諦めがあるようでした。
夫は家族のために尽くしてはいますが、飄々としており、患者の精神的な支えにはなっていないようでした。

「思い残すことは無いですか」の問いに対し、「夫に対して特に話さなければならないことはない」と、冷めた発言が印象的でした。

方針が変更されることは良くあることです。

家よりも施設。この選択も充分ありだと思います

Follow me!