食べられなくなった時の選択肢、『胃瘻』


『肺炎』で入院して、絶食が1ヶ月続いて食事が取れなくなり、胃瘻(いろう)を造ったということがよく聞かれます。今日は胃瘻のお話しです。

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胃瘻とは

胃瘻とは、お腹の外側から胃に穴を開けて、直接、食べ物や水分、薬を入れる為の管を通していることを言います。

胃瘻を造る場合は、病院での入院が必要になります。一昔前は外科的手術によって胃瘻をつくっていましたが、現在は殆ど、上部消化管内視鏡(胃カメラ)を使って、胃の中を確認しながら、お腹の外側から胃に穴を開けて造ります。

胃瘻の種類

胃瘻のタイプには色々あって、胃の内側の形によって分けると【バンパー型】と呼ばれるものと【バルーン型】と呼ばれるものがあります。
【バンパー型】の場合には、長持ちしますが、交換に手間が掛かることが難点です。この為に、在宅では困難なことが多く、その都度病院に行って貰う必要があります。
一方【バルーン型】の場合には交換頻度は早くなりますが、交換手技は比較的簡単で、家でも交換可能です。

それぞれに、メリット・デメリットがあります。

胃瘻に入れる栄養

胃瘻から入れる栄養分は【薬扱い】のものと、【食品扱い】のものがあります。【薬】の場合には、医療保険の適応になって個人負担は軽くて済みますが、種類が限定されています。一方、【食品】の場合には、高くはなりますが好みによって色々な栄養素を含むものが多く、種類も豊富です。

胃瘻を造ったらそれで問題解決?

食べられなくなった原因が、飲み込む力が衰えてきたことによる場合には、胃瘻を作ったからといって安心できません。
飲み込むことを嚥下(えんげ)といいますが、嚥下機能が低下すると、肺に物が入ってしまう誤嚥(ごえん)がおこります。
誤嚥を起こすと肺炎になります。

口から食べられなくなれば、誤嚥がおこらないために、肺炎にはならないと思いますか?
実は、人間は1日に約1.5Lの唾液を自然に飲み込んでいるといいます。
たとえ胃瘻にして、口から食べなくなったとしても唾液の誤嚥を防ぐことは出来ません。

胃瘻の是非

胃瘻を造ることで、栄養・水分・薬剤を体内に取り込むことができるため、生命維持が図れます。何らかの原因で食べられなくなった若い方にとっては、胃瘻は生きるために重要な手段です。
しかし、高齢による自然な形での食事量の低下に対しては、胃瘻を造るか、造らないかは議論のあるところです。
そこには、ただ単に治療するという問題とは別の、どのように生きて、どのように亡くなりたいのかという個人の問題が、大きく関与します。

いざというときのために、食べられなくなったら胃瘻を造ってでも長生きしたいのか、そのまま自然に任せて亡くなることを選択するのかを、家族とじっくり話しておくことが必要です。

エンディングノートに記載しておくのもひとつの手です。

人生の終い方を考えておきましょう

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