【胃瘻】を造れば誤嚥が起こらない?


今日は、施設に長いこと入所している或る高齢女性の方のお話しです。

Young girl's hand touches and holds an old woman's wrinkled hands.

この方は、『アルツハイマー型認知症』が進行して、何年も前から言葉が出なくなり、寝たきりの状態です。

入院から胃瘻造設

ある時、『誤嚥性肺炎』になり入院しました。
病院の医者からは「これからも誤嚥を起こす可能性が高いから」と、【胃瘻】を造ることを勧められました。
本人はもちろん判断できないので、代わりに息子さんが説明を受けて同意しました。そして、【胃瘻】を造って、施設に戻って来ました。

退院後の様子

それから、しばらくすると痰が多くなって、頻回の吸引が必要になりました。
この施設は、昼間のみ看護師が常駐していて、夜間は介護職員だけになってしまいます。
数時間毎の吸引が必要となれば、施設では対応が困難となります。

息子さんとの面談

そこで、息子さんと面談し「このままでは痰による誤嚥性肺炎を起こす可能性があること、吸引は施設では困難であること」を、説明しました。
そして、このまま施設での看取りを考えているのであれば、胃への注入量を減らすことを提案しました。

その時、息子さんは「病院では、【胃瘻】を造ったら誤嚥はなくなるし、栄養も減らさなくて良いと思ったので【胃瘻】に同意した。こんなことなら【胃瘻】を造らなければ良かった」と怒りをあらわにしました。

【胃瘻】の限界

残念ながら【胃瘻】を造っても、誤嚥の心配が全く無くなるわけではありません。
人は、1日に唾液を1L以上飲み込んでいると言われています。例え食事や水分を胃瘻から入れていても、唾液の誤嚥の危険は無くなる事はありません。

また、強制的に栄養と水分を入れていても、死が近くなって来て、体がそれらを処理できなくなる時がいつかはやって来るのです。このときに処理できない水分は、手足の浮腫みとか胸水、腹水、痰になって表に出てきます。そして、痰が出ると呼吸が出来なくなりますので、どうしても吸引は必要となるのです。

方針の変更

この方は『認知症』発症から10年以上経過しており、末期の状態です。当初から「食べられなくなったら【胃瘻】は造らずに自然な看取りを」と、息子さんは希望されていました。
ところが、入院中の特別な環境の中で、病院の医師に勧められて意見を変えてしまったのでした。

当初の方針が変わるという事ことは、あっても当然だと思います。正しい答えはありませんし、色々と悩んだ上での選択であれば、それを尊重すべきだとも思います。

ただ、病院側が胃瘻選択を迫るのであれば、患者や家族に寄り添って、もう少し丁寧な説明があったら良かったのにと残念に思います。

胃瘻を造っても【誤嚥】は起こします

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