口は『病』の元


「口の中を『あーん』と開けて」と言うのは、小児科外来では良く見る風景です。おとなの診察では「喉が痛い」とか「口内炎が出来た」などの訴えがあれば、口の中を見ることになりますが、ともすれば省略されがちです。

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今日は、【口腔ケア】と【入れ歯】についてのお話しです。

在宅初診時に行うこと

在宅診療に初めて伺う時には、1番最初に「今、辛いことや問題になっている病気」について問診します。それに加えて、「これまでどんな生活をされてきたか」という生活歴や、「どんな病気に罹ったか」或いは「手術をしたか」という既往歴、「家族構成」などの家族歴に、「どんな仕事をこれまでしてきたか」という職業歴、「アルコールやタバコの嗜好」や「アレルギーの有無」などなど一般の外来と同様に、一通り伺います。

そして、身体診察も行います。
この時に、口の中も必ずチェックします。

口の中から分かること

口の中を診る主な目的は次の3つです。

  1. 歯の状況及び入れ歯の適合具合
    歯がどれ位残っているのか、入れ歯はあるか、その入れ歯は上手くフィットしているか
  2. 口腔内衛生状況の確認
    口の中が汚れていないか、ちゃんと手入れされているのか
  3. 舌の状態や口内炎、潰瘍の有無の確認
    舌に苔がべったり付いていないか、口内炎や、それがひどくなった潰瘍がないか

これらは、自分で歯磨きが出来て、食事も自分で取れている人では、問題になることは余りありません。
ところが、在宅患者の場合にはこれらのことが自分で出来ない人が殆どなのです。つまり、その患者が、どのような介護を受けていて、どういう状況下に居るのか、口が如実に語ってくれるのです。

食事や飲み込みに対する影響

食べることは、生きて行く上での基本的な行為です。多くの患者を見ると、「食べられない、食べても美味しく感じられない」は、患者の生きる力を奪っているような気さえしています。
その「食べる」ためには、食べ物を良く噛んで飲み込む必要があります。歯が無くなったり、入れ歯が合っていなければ食べ物を上手く噛む(咀嚼する)ことが出来ません。

人は、年齢と共に飲み込む力も劣ってゆきます。
そうなると、食べた物が誤って気管の中に入ること(誤嚥)が起こりやすくなります。
この時に、口の中が不衛生であると、『肺炎』を起こす可能性が高くなってきます。

口内炎や潰瘍、舌に問題があると、痛みの為に食欲が落ちてしまいます。
どこが痛いとハッキリ言えない『認知症』の方では、食欲不振の原因になります。

口の中の問題アプローチ

『口内炎』など、処方で良くなるものは対処しますが、多職種にお願いすることもあります。

歯や歯肉の問題については、「歯科の先生」にお願いすることになります。最近では在宅に訪問診療してくれる歯科の先生が増えていて、非常に助かります。

口腔内衛生に関しては「言語聴覚士」にお願いして、飲み込みと共に【評価】して貰います。そして、「栄養士」と一緒に、適切な食事形態や食事方法、口腔内ケアのやり方等の指導もお願いしています。

まとめ

口から読み取るサインに、いつも敏感で居たいと感じています。また、口ひとつ取り上げても、「多職種での関わり」が必要です。

口は『病』の元です

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