『神経難病』の方の在宅療養


『筋萎縮性側索硬化症(ALS)』や『多系統萎縮症』、『脊髄小脳変性症』などのいわゆる『神経難病』を抱えながら家で療養されている方が居ます。

Ice Bucket Challenge - fund raising for ALS vector concept. Viral social activity. People dumping buskers of cold icy water on themselves for charity and donations.

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今日は、『神経難病』のうち特に『ALS』患者の在宅療養についてのお話しです。

神経難病

一口に『神経難病』といっても、多くの種類の病気があります。『神経難病』とは、神経細胞(ニューロン)が変化して起きる病気の総称です。
そのなかには、進行がゆっくりで変化があまりみられないものや、進行が早く数年単位で麻痺の範囲が拡大してゆくものもあります。
後者の例では『ALS』があります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは

『ALS』とは、体の筋肉を動かす神経が壊れてしまい動けなくなる病気です。
手足の麻痺から始まることが多く、やがて全身に麻痺が進行し、最期は呼吸筋が麻痺して死に至ります。
進行は早く、発病から亡くなるまでは5年程度と言われていますが、個人差があります。
感覚や知能は正常で、意識は最期までハッキリしています。

原因は分かっていません。9割は突然発症で、残り1割は遺伝性と言われています。
発病は、50代から60代の男性が多くなっています。
残念ながら、いまだに効果的な治療法は見つかっていません。

2014年には「アイス・バケツ・チャレンジ」が話題になりました。これはALS協会に寄付するか、それともバケツの水をかぶるかというもので、有名人がFacebook上で氷をかぶる様子がアップされて、社会現象となりました。そのパフォーマンスについては色々な場所で物議を醸しましたが、このALS協会とは、世界的に資金を集めて治療法を求めて今もALSの研究をしているところです。実際に患者と接している身としては、研究が一日でも早く進む事を期待します。

ALS患者の重要な選択

ALS患者は、将来「人工呼吸器を使うか使わないか」という大きな選択をする必要があります。
人工呼吸器を使わなければ、呼吸筋が麻痺して亡くなります。
人工呼吸器をつければ生きてゆけますが、その後はずっと装着した状態が続きます。
どちらにしても辛い選択です。

ところで、人口呼吸器ですが、家でもこれをつけて生活することが出来ます。
私たちが訪問診療を行っている先では、人工呼吸器を既につけている方や装着すると決めている方、装着しないと決めている方がいますが、選択する患者のそれぞれの考えを尊重して、対応することにしています。

在宅での様子

『ALS』では、最期まで眼球運動は保たれるので、例え発声が出来なくなったとしても【目の動きでコミュニケーションをとる】ことが出来ます。
こちらが話しかけて、患者が「Yes, No」を目で合図するような診療です。

ある患者さんは、「サザンオールスターズ」が若い頃から大好きです。発病してからも、近くでコンサートがあれば、これまでも何回か参加してきました。人工呼吸器をつけたまま、特別席での鑑賞です。
その準備には在宅の多職種が関わり、会場までの送迎を確保したり、異常時に備えて医師がバックに控えたりと入念に行われます。本人にとっても私たちにとっても一大イベントです。

今では顔の表情も余り無くなってしまった患者さんですが、コンサートの話をすると口元が少し緩むような気がします。

治療することも進行を止めることも出来ませんが、最期までやりたい事の実現の為にサポートするのが在宅医の勤めと思っています。

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