一人で居ることの自由
前回は高齢者の寂しさのお話しでした。
今回はその続編のようなお話しです。
高齢の脳梗塞後遺症で半身麻痺の方や神経難病で寝たきりの方が、一人暮らしをしているケースがあります。傍目からみると、施設なり病院なりに入所・入院する方が、本人の不安も無くて良いだろうと考えがちです。
しかし、介護保険や障害福祉サービスを上手く使って、多少の不便は覚悟の上で独居を貫いています。
その理由は、『自由』があるからです。
脳梗塞後遺症の80代男性のケース
80代の独居男性のケースです。家族は遠方に娘が1人だけ居ます。
『脳梗塞』を数年前に起こしているので、構音障害、半身麻痺があります。食事やトイレなどの日常生活動作はかろうじて可能ですが、買い物、調理、洗濯、掃除はヘルパーが行っています。
週1回訪問診療に伺い、『糖尿病』、『高血圧』などの内服治療を行っています。
目立った『認知症』はありませんが、発語は脳梗塞の影響で聞き取りにくくて、コミュニケーションを取るのが困難です。自宅での身動きにも不自由さがあり、週3回はヘルパーが入っていますが、掃除が行き届かずゴミが散乱しています。サービスは入浴をかねて小規模多機能施設に週1回泊まりと、デイサービスに週1回通っています。
体調に変化がある時は、クリニックに電話を掛けて貰う事になっていますが、構音障害があるので電話では話しが中々通じません。したがって、電話があったら、とにかく駆けつけるという体制にしています。
神経難病で失明、寝たきりの30代男性のケース
神経難病を抱えながら独居の方のケースです。
10代から徐々に進行する難病で、両目失明の上に、脊髄腫瘍の影響で胸から下は麻痺があります。
おむつで尿道カテーテルが入っていて、生活は全介助です。
朝から夜まではヘルパーが常時入っているのですが、深夜は一人です。
深夜はもし、何かあっても電話も一人では掛けられません。
急変した場合には、命取りになることもあると本人に説明して、了解の上で現在の生活が成り立っています。
ひとそれぞれの生き方
お二人に共通なのは、施設などの規則を強制される生活では無くて、自由を求めている事です。
もともとの病気もあって、急に状態が悪化する事もあり得ますが、その時はそれで良しという潔さがあります。
一人の寂しさより、一人の自由を選んだ生き方です。