高齢者の寂しさ


高齢者になって介護が必要な方は、近くに身寄りがいない、或いは、家族が働いていて介護が出来ないなどの場合には施設に入所する事が多いと思います。
施設に入れば毎日誰かが声を掛けてくれるし、色々な催しもあるので、一人で家に居るよりも寂しくないでのは無いかと思います。

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今日は高齢者の寂しさについてのお話しです。

施設入所中のある女性

Aさんはご主人が築いた建築関係の会社を、夫婦で切り盛りしてきました。そして、お子さん2人も育て上げました。
1年ほど前に夫が亡くなり、その後、施設(サービス付き高齢者住宅)への入所となりました。
息子さんは会社のあとを継いでいて仕事が忙しいし、娘さんは嫁いでいて面倒がみられない為です。

Aさんには軽度の認知症がありますが、日常の会話は成立します。脳梗塞後で左半身麻痺があり、日常生活では、車いすの移乗やトイレ介助が必要です。
施設は最近出来たモダンな建物で、デイサービスも併設されています。比較的軽症の方が多い為に、入居者同士の交流もあります。
経済的にも裕福です。

しかし、この方には常に不満が渦巻いています。

Aさんの訪問診療は、施設入居と同時に始まりました。入居時にそれまで内服していた薬を確認すると、複数の医療機関からの処方を受けており、合計1日約30錠くらいになっていました。薬だけでお腹が膨れるほどです。
これは、お母さん想いの息子さんが、本人が不調を訴える度に病院へ連れていって薬を貰った結果です。
「頭痛をはじめとして、その他の色々な不調は薬が原因の事もあります」と説明の上で、必要最低限の5種類ほどに減らしました。そんな経緯のある方です。

訪問診療は月に2回ほど伺っていますが、毎回待ってましたとばかりに体の不調を訴えます。
「頭が痛い、お腹が痛い、手足がしびれる、寝られない、声が出にくい、便が・・、目が・・、食欲が・・」
20分ほど絶え間無く、訴え続けます。そして、何か薬で良くならないかと言います。施設看護師に確認すると「不調の訴えは多いものの、食事、睡眠、排泄も特に問題なし」との事です。

お話しが一区切り付いたところで、「Aさんの不調を治す薬はないなあ」「Aさん寂しいんだね」と聴くと、「寂しい…」と答えます。自分の不調を訴える事で、誰かにかまって貰いたい気持ちが強いのです。

施設内でも、同居者に誰彼構わず不調を洩らすので、煙たがられているようです。
自分を見て欲しい、自分を構って欲しいと自分のことで頭がいっぱいなのでしょう。

Aさんの意識を変えない限り、この問題を解決するのは難しいようです。

「家族が来た時に感謝の気持ちを伝えてみる、施設内でも相手の立場に立って話をしてみるなどしてみたら、相手もAさんの事を気遣ってくれるかもしれませんよ。」と提案していますが、簡単には受け入れてくれません。

寂しさは場所の問題ではないようです。

Aさんの寂しさが解決されるには、まだまだ時間がかかりそうです。

 

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