最期のわがまま
普段は勤務していない診療所の在宅患者さんの看取りに伺いました。
家が好きなひとでした。子どもや孫に囲まれながら最期を迎えることが本人の希望でした。それが叶えられて本望だったと思います。
亡くなった90代男性の奥さんがつぶやきます。
この方は、心臓を中心に色々な病気があって、入退院を繰り返していましたが、「もう入院はしない、家族と一緒に家で過ごす」と決めた方でした。
お盆には、遠方から家族が集まって、賑やかに過ごされたそうです。
それから、2週間のことでした。
今日は、「最期の場所」についてのお話しです。
最期の場所
他人の家やホテルで「最期を迎えること」に、多くの方は抵抗があるのではないでしょうか。病院も、ある意味「宿泊施設」と変わりありません。いつもの空間と異なり、寛ぐことが出来ない場所です。
有料個室以外の2人部屋4人部屋では、相部屋の「民宿」以上にプライベートが確保できません。行動も著しく制限されてしまいます。酒やタバコはもってのほか、おやつを食べることも、就寝や食事の時間さえも自由になりません。
これでくつろげといっても無理ですよね。
病院はあくまで病気を治すところであり、その為には「ある程度の制約は当然」という雰囲気があります。
急性期の治療の場としてなら良いのですが、「最期を迎える場所」としては決して良い場所ではありません。
最期はわがままでいい
人は生まれてから死ぬまで「自分」が主人公です。
生まれるのは自分の意志ではありませんが、人生の最後の幕は、自分で降ろすのが理想ではないでしょうか。
自分の最期の場所を決める時くらい、わがままをいっても良いのでは、と私は思います。
死の不安があって、いつも医者や看護師がいる病院が安心できる方もいるでしょうし、今回の患者さんの様に自宅にこだわる方もいます。
環境の変化
最近では大きな「急性期病院」は、病名ごとに「決められた入院期間を超えると儲からない」システムになっています。そのため、患者が極力早く退院できるように動いています。昔のように、死ぬまでずっと入院させてくれる所ではありません。
その一方で、「在宅」での看取りを後押しするサービスは充実してきています。
【訪問診療】【訪問看護】【訪問入浴】【ヘルパー】など家で利用できるものに加え、昼間の【デイサービス】や泊まりの【ショートステイ】などもあります。
本人及びご家族が、「最期の場所」を決めて意思表示さえしたら、それをサポートする体制は整いつつあるのです。
今後は、「家や施設で最期を迎える希望」が、より通りやすくなります。