多職種連携には「ITツール」


「多職種連携をしてゆきましょう」と、色々なところで言われています。
在宅での療養を支えてゆく為には、医者だけではどうにもならず、多くの職種が関わる必要があります。

A boy and a girl diving at the same time into a pool with a digital tablet form. Near the side of the pool, a girl reads in a digital tablet and another girl speak on the phone.

今日は、具体的にどうやって多職種連携できるのかというお話しです。

多職種連携とはどういうもの?

私は、ある患者さんに関わりのある全ての職種が連携を取って、それぞれの仕事に責任を持って行うことではないか、と思います。

多職種の中に医者が入ると、どうしても一方的な指示になりがちで、他の職種は医者に遠慮をしてしまいます。しかし、在宅医療の「中心」はあくまで患者さんであって、医者ではありません。
医者は在宅に関わる多くの職種のひとつでしかないのです。実際、在宅診療で医師ができることといえばたかが知れています。
訪問看護、訪問リハビリ・マッサージ、訪問薬剤師、栄養士、ヘルパー、ケアマネージャー、医療器具や酸素の業者などの多くの人々の働きが或る1人の患者の在宅診療を支えているのです。

連携はどうやって取ればよいの?

一つの事業所内で全ての職種が揃っている場合には、顔の見える関係がありますから、比較的連携は取りやすいと思います。しかし、現実的にはそれは困難です。
実際は、事業所が異なり普段顔を合わせることが無い方々との連携を図ることになります。
加えて、それぞれの職種ごとに患者さんに関わる時間帯も異なります。

どうやって連携をとるのかが問題となります。

連携は情報交換

連携でやり取りするのは【患者の情報】です。
この情報には3つあると考えます。

  1. 患者のリアルタイム情報
    今日はどのような様子だったかとか、食事や睡眠、排便はどうだったかとか、患者さん・家族はこんなことで悩んでいる、とかの患者のリアルタイムな情報
  2. 患者に対する指導情報
    医師からの治療説明、薬剤師からの服薬指導内容、リハビリからの体位を保つ工夫や食事に関する提案、看護師からの排便コントロール指導など、それぞれの職種から患者に伝えられた情報
  3. 問題点や方向性の情報
    現在の問題点や将来の方向性など、それぞれの職種で考えている情報

情報ツール

これらの情報をどうやったら共有できるのかが多職種連携ではポイントになります。
以前からよく使われているのは「連絡ノート」です。これは、それぞれが訪問の度にノートに記載してゆくものです。そして、次に来た人がそれを見てこれまでの情報を把握してゆきます。

「連絡ノート」でのメリットは、簡単に出来ることです。
ただ、その場で書くだけ。ノート1冊だけあれば良いので安価でもあります。
しかし、デメリットもあります。

  • 忙しく慌ただしい状況で記載するために、どうしても内容がその場のことに限定されること。あまり細かく記載できないこと。そして、他の人の文字は時に判読できないこと。
  • 現場に行かなければ読めませんので、リアルタイムで情報を共有することが困難であること。
  • 必要な人が全て読んでいるかが不明で、本当に情報が伝わっているのかが不確かなので不安が残ること。

「ITツール」の活用

現在は殆どの方が、PCやスマホによってメールやSNSが出来る環境にあります。
この仕組みを多職種連携に生かす為に、色々なところから「情報共有ソフト」が出ています。SNS感覚で記入できるようになっていて、費用も余りかかりません。
「情報共有ソフト」を利用するメリットは、「連絡ノート」のデメリットを克服出来る点です。
リアルタイムで、必要な人に確実に情報を伝えるのに優れています。
加えて、テキスト以外のPDF、写真なども添付出来ますので【情報の質】が上がります。

注意点としては、セキュリティーの問題があるので安全なソフトを使う事と、参加メンバーに対して情報の取扱に注意して貰うことです。

まとめ

私たちのクリニックでは、困難な事例で多職種との密な連携が必要な場合には、この「情報共有ソフト」を利用しています。実際使うと、その効果は絶大です。
もちろん多職種連携は「ITツール」だけで出来るわけではありません。
時間に余裕の無い時には電話で話すこともあれば、直接会って話すことが必要な場合もあります。
しかし、患者にとってより良い環境をつくってゆく為に色々な工夫を凝らすことは、とても必要な事だと実感しているので、これからも「ITツール」を駆使して、皆と共有してゆきたいと思っています。

多職種連携に「ITツール」は不可欠です

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