超高齢者介護の心づもり
いつも働いている在宅クリニックではなく、外来も在宅も行っている診療所で一日勤務した時の話です。
この診療所では訪問診療行っている患者さんだけでは無く、外来患者さんにも24時間対応する電話番号を教えています。
ある金曜日の昼過ぎに、外来患者のご家族から往診依頼の電話がありました。
往診依頼
患者は90代の高齢女性です。いつも、外来では『高血圧』の薬や、関節の痛み止めを処方しています。
家族の話では、「昨日の昼から食事が取れず、吐き気もある」とのことです。
通常、外来患者の場合には、基本的には外来まで来ていただくことになりますが、状態が悪い場合には往診に伺います。
電話の状況では、外来受診は困難と判断し往診に伺いました。
往診での状況
お家に伺うと、ご本人の意識はハッキリして、お話しは出来るのですが、薄い茶褐色の水様性の嘔吐が続いていて、しんどそうでした。午後から嘔吐が始まったとのことです。
昨日からの食事摂取不良と、嘔気・嘔吐を繰り返している超高齢者です。
血圧は正常で、発熱なく、呼吸状態は良好でした。
診察では、胸の音は良好で、お腹の張りも無く押しても痛みはありませんでした。
『熱中症』や『脱水症』或いは消化器系の異常が疑われます。
入院のススメ
食事が取れないだけであれば、点滴をして様子を見ることも可能だと思いましたが、嘔吐が続いているため病院での精査が必要と判断しました。
そこで、ご主人と娘さんに病院受診を勧めました。
ご家族は点滴で様子を見たいと言いましたが、あいにく金曜日で翌日からは週末になります。
昼間であれば近くの病院に受け入れを交渉できますが、休日・夜間は救急病院となり遠方になる可能性があります。
超高齢者の場合には、症状がハッキリせず、いつ何が起こるか分からないことを説明しました。
病院まで連れて行けないとのことだったので、救急車を手配することとし、病院受診を了解していただきました。それから救急車がくるまでに、着替えや保険証などを準備するよう指示しました。
いざというときの心積もり
自宅で高齢の方の介護をされている方は、いざ何か起こったときの対応をあらかじめ考えておく必要があります。
高齢者は、いつ何が起こってもおかしくありません。『肺炎』や『尿路感染』はよくなる疾患ですし、ひょんなことから『癌』が見つかるかも知れません。
「今まで元気だったから大丈夫」と言うわけには行かないのです。
年々確実に衰え、死は身近になっているのです。
この患者のように、外来通院している場合には、比較的全身状態も良いことが多いので、体調が悪くなったからといって、そのまま【看取り】になることはありません。一旦は、病院へ受診となることが普通です。
入院することも考えて、【最低限の、下着やタオルなどをあらかじめバッグに入れておく】【健康保険証やお薬手帳は、誰でもすぐ出せるような分かりやすい場所に置いておく】などの準備をしておくことが必要です。
備えあれば憂いなしです。