外来での一コマ
今日は、或る日の外来での一コマです。
アラフィフより若い方ですが、30代男性が背部痛で来院しました。
問診での内容
3日前から、背中のやや右側が痛くなった。痛みは動くと出現し、安静時には痛くない。
痛みは我慢できない程の痛みではない。痛みの原因は、特に思い当たることはなし。
発熱はない。食欲は普通で排便も問題なし。
職業は調理師。
今までに罹った病気は、数年前にぎっくり腰をしたくらいで、その他特になし。
お酒は全く飲めない。タバコは1日20本を10年間吸っている。
父は『心筋梗塞』でステント留置している。母は『高血圧』。
身体診察
身長168cm、体重68kg
血圧136/92、脈拍70回/分、呼吸数16回/分、体温36.2度、酸素飽和度97%
胸部聴診、異常なし。背部第5胸椎の、やや右に軽度圧痛あり。
診断
外来では、めったには無いが、見逃すと命取りになるような病気はないかをまず考えます。
背部痛と聞くと『心筋梗塞』『大動脈解離』『気胸』などが、それに当たります。
しかし、普通に歩いて外来に来ていて、話しぶりなど全体の印象はそれほど悪くありません。身体診察でも大きな異常は見られ無いので、ひとまず重大な病気が隠れている可能性は低いと判断しました。
次に、良くある病気を考えます。
動かして痛みが出ることから、筋肉や骨の異常を疑い、右腕を動かすことが最近無かったかを尋ねました。すると、そういえば少し前から太鼓を叩くような体を動かすゲームに凝っていて良くしているとのことでした。
普段あまり使わない筋肉を、急に動かしたことによる筋肉痛と診断しました。
気になること
血圧、特に下の血圧(拡張期血圧)が高いこととタバコが気になりました。
そこで、生活面をもう少し聞くことにしました。
いままで血圧が高いと言われたことは無い。
食事は食べたいだけ食べる。塩分が多いものを良く食べる。運動は全くしていない。
タバコは、出来たら止めたいと思っているが止められない。
説明と提案
まず、次のように説明しました。
- お母さんが高血圧、お父さんが心筋梗塞の既往があり家系的に血圧が高く、血管系に問題が起こりやすいこと
- 血圧が高い状態が続くと、心筋梗塞や脳梗塞になる可能性が高くなること
- タバコは血圧を上げることと、がんになりやすいこと。
- 体重を身長で2回割った値(BMI)は24.0で、理想の体重は62kgであること
以上を伝えた上で、【次回までの課題】を提案しました。
- 血圧は、一時的であるかも知れないので、2週間位毎日計って記録してみること
- 何かダイエット出来ることを考えて、実行してもらうこと
更に、禁煙する気持ちがあれば、『禁煙外来』があることを説明し、次回詳しくお話しすることとしました。
今までこんな話を聞いたことはなかった。少し考えてみますとおっしゃっていました。
30代の方は、滅多に外来に訪れることはありません。