初めてお家に伺う時


在宅専門のクリニックに勤務して2年近くなりました。それでも、新しく訪問診療が開始されることになり、初めての患者さんのお宅に伺う時には緊張します。

今日は、初診の時の様子についてのお話です。

インテーク

通常は事務職員と看護師が先に患者宅にお伺いしてから、訪問診療の内容や費用についての説明を行い、患者の現時点で困っていることや日常生活動作(ADL)、これまでの病気の経緯や家族構成などの詳しい情報をあらかじめ入手しておきます。これを「インテーク」と呼びます。説明に納得して頂いて契約を行った後に、訪問診療が開始となります。

初診時に聞くこと

初めて伺う時には、医師と看護師に加えて、「インテーク」を行った職員やケアマネージャー、訪問薬剤師などが同席することがあります。
初対面では、患者さん側も私達も緊張します。
ご挨拶をして、差し障りのない天候の話などから話を始めて、リラックスした雰囲気になることを心がけます。

初診時に聞くことには、次のものがあります。

  • 訪問診療に至った経緯
    通院先やケアマネージャーからの紹介によって訪問診療が開始されることが多いですが、直接本人や家族から依頼があることもあります。
    末期癌の方で通院先の病院からの紹介の場合には、本人・家族が訪問診療の必要性を感じておらず、病院から「見放された」と感じているケースがあります。この場合には、在宅医に対していい印象を持っていないこともあります。
  • 現在の病状の理解度
    末期癌の場合には特に重要ですが、本人・家族が「現在の病気についてどのような説明を受けて、どのように理解しているか」を確認します。
    「がん告知を本人が受けていないケース」「がん告知は受けているも余命がどれ位かを聞いていないケース」「病名や余命の告知を受けているはずであるが理解していないケース」など様々です。
  • 現在、一番困っていること
    痛み、しんどさ、食欲、便秘、不眠など、現在何に困っているのかを聞いて、先ずはそれを解決できるように図ります。

観察すること

患者さんとお話しをしながら、さりげなく家の中の状況を確認します。
「整理整頓されているか」「掃除は行き届いているか」「トイレや風呂までの動線はどうか」などを見ます。それらを観る事によって、「介護力がどの程度あるのか」「サービスをどの程度入れるたらよいのか」の判断材料になります。
また、「枕元に誰の写真があるか」「趣味のものが飾ってあるか」なども観察します。これは、「患者さんが何を大切にして、これまでの人生を生きてきたか」を理解する上では、とても重要な事です。

以前お伺いした先では、高齢の寝たきり男性のベッド周りに鉄道の写真が飾られていました。また、ベッド柵には丈夫そうな編み紐が掛けられていました。始めは鉄道ファンだったのかと思いましたが、この方は元国鉄職員で車掌をされていた方でした。そして、その紐は現役時代の「車掌時計用」のものでした。枕元で鉄道の話をする度に、表情が緩んでいたことを覚えています。

診察

初診時でも、内科的診察をひと通り行います。通常は、採血も実施します。

薬の確認

これまでは複数科から薬を貰い、大量に飲んでいる方がいます。本人・家族の意向を確認しつつ、薬を減らしてゆく方向で話をすることもあります。

訪問頻度の決定

次回の訪問予定と、今後の訪問頻度をお伝えします。落ち着いている方の場合には、月2回程度の訪問が多いですが、状態の悪い方の場合には、週1回や週2回のこともあります。毎日伺うケースもあります。

概ね、このような流れで初診が行われます。リラックスした雰囲気づくりを心がけ、言葉も選びながらだいたい30分から1時間を要します。

初診は、お互いに緊張しますね

 

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