「家での看取り」を決めている家族
「最期をどこで迎えるか」を決めている人は少ないですが、中にははっきりと決めている方もいます。
今日は、最近訪問診療が始まった方のお話です。
背景
これまで、特に大きな病気をすることなく生活されて来た90代女性の方です。
夫を介護されて、最後は病院で看取った後の、この8年間は1人暮らしをしています。同じ敷地内には、60代の息子さん家族が住んでいます。
浮腫と歩行困難
8ヶ月前に突然両足が腫れて歩けなくなりましたが、病院に行くことなく湿布で様子を見ていたら少しずつ良くなりました。その後は、両手にも浮腫みが出ることがありましたが、これも暫くするとマシになりました。
ただ、依然として歩きにくさはあり、外出することが出来なくなってしまいました。抑うつ傾向があり心療内科にかかっていましたが、通院が出来ないので、息子さんが薬だけ取りに行っていました。
訪問診療開始
もともと便秘がひどくて硬いコロコロの便が出ていたのですが、最近になってドロっとした粘液状の便が一日中出るようになりました。トイレには何とか行くものの、間に合わずに漏れてしまうことが多くなり、息子さんが四六時中、介護をする必要が出て来ました。
そんな状況の為に、ケアマネージャーの紹介で訪問診療が開始されることになったのです。
初診時の状況
お腹を触ると、下腹部の真ん中に直径10cm位の塊が触れます。石の様な硬さです。
「痔もある」とのことでしたので、肛門を拝見して直腸まで指を入れて見ますと、内部にもやはり硬い物が触れます。
『大腸がん』を疑います。
息子さんには、「病院で詳しく調べて見ないと分からないものの『がん』の可能性が高い」ことを説明し、検査を受けるつもりがあるか確認しました。
看取りの覚悟
すると、「父を家で介護していましたが、結局入院することになってしまいました。最期は、点滴の為か体が膨れてしまってかわいそうでした。その時に、母のことは家で最期を迎えさせると決めたのです。」と言われました。そして、「年老いた親を、もう病院には行かせたくありません。家で出来る範囲の治療をお願いします。」とのことでした。
『看取りの覚悟』が決まっています。
幸い今のところ困っているのは、便の問題だけで痛みはありません。食欲もあります。
病院での精査をしない方針の為、いつまでもつか判断しにくいところですが、こちらも『最期の看取り』までさせていただく覚悟を決めました。
看取りには、覚悟が必要です