親を看取る不安


60代女性Aさんが婦人科系末期がんで抗がん剤治療を行いましたが、もうこれ以上治療はできず家での緩和医療を勧められて、在宅準備のために一旦私が勤務するクリニックに入院しました。いよいよ明日が退院となった日に、娘さんと話す機会がありました。

今日は、親を看取る不安についてのお話です。

背景

Aさんは、もともとは夫と娘さんさんの三人暮らしでしたが、1年前に婦人科系がんを発症し大病院に入院となり、その後抗がん剤の治療を何回か行いました。
夫は『パーキンソン病』で、生活全般に介護が必要です。Aさんが主に夫の介護をしていましたが、Aさんが『がん』を発症してからは長女さん一人では介護負担が大きく、夫は施設に入所してもらいました。

娘さんの不安

娘さんは30代で昼間働いており、夕方や休みにAさんや夫の面会に行きます。息子さんは遠方にいますが、Aさんのことは任せると言って相談相手にはなりません。そんな娘さんが涙ながらに漏らします。

家で母を看取ることが不安なんです。いままで経験がありませんから。

確かに不安は大きいと思います。普通の人であれば、親を看取る経験は一生のうち1回か2回です。ほとんどの人が、初めての「看取り」です。これからどうなってゆくのか情報もない中で、「看取り」に対して不安に思うことは当然のことです。
近くに相談相手がいたり、複数で介護する場合にはまだ良いのですが、娘さんの場合はAさんや夫のことを一人で考えねばならず、本当に大変だと思います。

在宅医療チームの関わり

在宅看取りの場合には多職種が関わって、本人や家族の不安を少しでも解消できるようにします。具体的には医師が現状と今後の見通し、最期はどのようになってゆくのかを『看取りのパンフレット』を使って説明します。
訪問看護師や訪問リハビリでは、介護や機能訓練も行いますが、本人・家族の不安に耳を傾けます。
ケアマネージャーが生活全般の様々な困りごとについての相談に乗ります。

私たちは次のメッセージが伝わるように、心を砕きます。

「困った時にはいつでも連絡していいんですよ。私たちはあなたの伴走者です。」

 

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