訪問薬剤師の存在
在宅診療を行う上でどうしても必要な存在。それは、訪問看護師と訪問薬剤師です。
本日は、訪問薬剤師のお話です。
訪問薬剤師とは
薬局の薬剤師ですが、自宅まで訪問して薬剤を配達して、薬に関する相談にものり、飲み方の指導や飲み忘れ防止の為の工夫をしてくれるのが訪問薬剤師です。
私たち在宅医が訪問診療に伺っている患者さんは、一人では通院が出来ない方ですので、当然薬局にも行けません。ご家族が帰宅してから、薬局まで取りに行けるのであれば問題無いかというと、そうでもありません。
『癌』を煩っている方や、死が近く看取り前提の方、高齢の為に救急病院にはかからず家での治療を希望される方などでは、病状が悪化したり体調不良の時には、【休日・夜間を問わず24時間体制】で私たち在宅医が往診に伺います。
この時に、手持ちの薬で対応が可能であれば問題は無いのですが、新たに薬を追加する必要がある場合には、処方箋を発行して訪問薬剤師に薬を届けて貰う必要があるのです。
頻度としてそれ程ではありませんが、訪問診療を行う上で、どうしても緊急に必要になる医療用麻薬などを、24時間対応して貰える訪問薬剤師の存在は欠かすことが出来ません。
ある『乳癌』患者のお話
少し知的障害のある方で精神障害の弟さんとの二人暮らしの方です。1年前から乳房にしこりがあることを自覚していましたが、放置していて『癌』が乳房全体に広がった状態で病院受診されました。検査の説明を受けると酷く動揺して、精査拒否して、そのまま帰宅してしまいました。病院からの紹介で、私たちのクリニックの訪問診療が開始された方です。
初めての訪問時点で、痛みも相当強くて、夜も寝られない状態でしたので、痛みを取る為の麻薬の使用から話を始めましたが、新しい事に対する不安がとても強く、最初は全ての提案にNOでした。
この時に、訪問薬剤師さんが親身になって、患者さんの話しを聞いてくれていました。
毎日仕事帰りに訪問して、時にはお土産を持参して患者さんと弟さんと色々な話をしたようです。
徐々に信頼関係が出来て、「薬剤師さんの言うことなら」と薬の提案を聞いて貰えるようになりました。1ヶ月後には麻薬を充分量使えるようになり、痛みのコントロールが可能になりました。
この方の場合には、訪問薬剤師以外にも訪問看護師、ヘルパー、精神福祉相談員など、多職種が関わって、何とか今でも在宅での生活が可能となっています。
色々な人の協力があってこそ成り立っている現在ですが、やはり、初めの段階で患者さんの信頼を勝ち得た薬剤師さんの功績は大きいと思います。