施設看取りには介護職の不安解消が必要
親や配偶者の最期の時がいよいよ近い、と感じた時の最期の場所の選択肢としては『病院』『家』『施設』があります。
長らく施設で生活されていた方が老衰によって看取り段階になった時に、その施設が看取りの出来ない施設であったならば、急遽、入院先や他の施設を探さないといけなくなります。これは慌ただしくて、患者さんご家族にとって大きな負担となります。
入院先の病院では、救急医療が疲弊してしまって高齢の方の看取りを受け入れる余裕はありません。療養型病床は年々ベッド数が少なくなっているので、空きがありません。また、別の施設に移るとなると、条件に合う所が中々見つからなくて、費用の面でも大きな負担になります。
このような現状の中、今まで生活していた施設で最後の看取りまで行う事が出来たなら、本人も家族も安心して最期を迎える事が出来ます。
しかし、施設看取り為には、解決すべき課題が沢山あるのです。
今日はその中でも特に重要な、介護職員の不安への対応についてお話します。
ここでのポイントは、その施設が看取りを行っているかどうかです。また、施設側ではどのような準備がされているのか、施設を選ぶ上でも、知っておいて損はないと思います。
看取りにおける介護職員の負担
施設には色々な種類があって、看護師が常に居る所と居ない所とに分かれます。介護職員だけ、或いは看護師は昼間だけで夜は介護職員だけの施設である、という所が割合としては多いです。
そういった施設では、必然的に介護職員が中心になって看取りに関わる事になります。
ところで、介護職員は医療従事者ではありません。通常、人が亡くなる場面に遭遇する事は無いのです。また、亡くなる時の対応などの教育も受けていません。この点を考慮して十分な準備をする必要があります。
基本的に、介護職員の方も利用者について真面目に考えていて、できうるなら満足のいく時間を過ごして欲しいと考えています。しかし、経験が浅く教育されていない職員は看取りに際して、「自分たちの介護は果たして良かったのか」と不安に陥る事もあるでしょう。
また、人が亡くなるのを目の当たりにすると、強いショックを受けたりもするでしょう。
場合によっては、そのショックから立ち直れず離職するようなケースも出るかもしれません。
看取りの準備に必要な事は、まず介護者の不安を除く事です。
事前準備も無く施設での看取りを進めてしまうと、介護職員の不安が大きくなって、業務にも支障をきたす可能性があります。
介護職員の方に知っておいて貰いたい事は次の3つです。
死のプロセスを理解してもらう
家で看取る場合も同じですが、介護に関わる人に人間はどのようにして亡くなっていくのかという死のプロセスを知って貰う必要があります。
出来たら『看取りのパンフレット』を利用し、時間がある時に読んでおいて貰って下さい。
特別なことは必要ない
看取りに際して「何か特別なことをしなければいけない」と、考えがちです。
しかし、点滴をしないで自然な形で看取る場合には、吸引などの医療処置の必要がなく、眠るような最期を迎えます。したがって、特別に何かをしなければならないという事はありません。
常に寄り添って、声をかけたり、体をさすったりといった通常のケアを、今までよりも少しこまめに行っていただければ、それで充分です。
家族とのコミュニケーション
ご家族に対して、何か伝えなければいけないと考えるかもしれません。
ですが、看取りについてのご家族への説明は、主治医が行っているはずなので、「何か質問があれば主治医と連絡を取りますね」と、伝えて貰えるだけでいいです。
家族の不安がある時は、ただ、それを聞いてあげるだけでも楽になると思います。
そして、もし余裕がある時には、死のプロセスをご家族に説明していただけたら、更に良いと思います。