『楽なように』過ごすためには『麻薬』は重要


自宅での看取りを決意するまでのお話しを前回させていただきました。
家で親や配偶者を看取る決意で病院から連れて帰ってから、私たち在宅医がお家に伺い診療を行うようになります。

看取りの時期の患者を診るときに、必ずお話しする3つのキーワードを、たんぽぽクリニック永井康徳先生が提唱しています。

それは

  1. 楽なように
  2. やりたいように
  3. 後悔しないように

です。楽なように やりたいよう 後悔しないように 改訂版
この3つを可能な限り実現出来るように、医師を始め看護師、介護士、リハビリスタッフなどの多職種が関わってゆきます。

この3つキーワードの中でも、特に大切なのは、1つ目の『楽なように』です。
楽にならないと、やりたいことも出てこないのです。

家で看取ると云うこと
今回は看取りのケースで多いがん患者さんが『楽なように』なるためのお話しです。

がんの痛み

がん患者さんの場合には、最終的に痛みが出ることが多くあります。
その場合に、痛みを抱えたままでは、病院から家に帰ろうと思わなかったり、やりたいことに思いが馳せられなくなります。

麻薬の使用

通常がんの痛みに対しては、医療用麻薬を使って痛みをコントロールします。食事が取れて、薬が飲める状態であれば、内服薬から始めるのが一般的です。
薬がいよいよ飲めなくなった時には、貼り薬タイプや24時間持続皮下注射に切り替えます。
麻薬を適切に使う事によって、ほとんどの癌の痛みは、軽減するか全く無くなります。

少し前なら麻薬については、『廃人になる』『癖になる』『麻薬を使うようになったら終わりだ』といった偏見がありました。現在は麻薬の使用に関しては、比較的受け入れられるようになりましたが、一部の方には、未だ麻薬についての誤解があります。
医師が適切に痛みや全身状態を評価して使用する限りにおいては、麻薬は安全な薬です。癖になったりはしません。

麻薬は、病院でなくても、家に帰っても同じように使うことができます。
麻薬でがんを治す事はできませんが、痛みを無くす事によって、残された時間を、その人らしく、悔いの残らないように過ごせるようになります。
家で『楽なように』過ごしてもらうためには、麻薬をうまく使うことが非常に大切です。

入院中に麻薬が使われていなくて、新たに導入する場合には在宅医は上記のことを丁寧に説明します。
また、副反応(副作用)についても必ず説明するとともに、あらかじめ予防策を講じます。

麻薬の副作用

麻薬には特徴的な副作用があります。それぞれに上手く対応することで、快適に麻薬の使用が可能になります。

便秘

便秘は必ず起こる副作用です。
下剤を定期に内服して貰って、なるべく便秘にならないように注意します。どうしても出ない場合には、浣腸や摘便が必要になる事があります。

吐き気

これも良くある副作用ですが、数日から1週間程度で治ります。その間は吐き気止めを内服します。

眠気

これは数日で治ることが多いので、あらかじめ説明しておきます。

麻薬で痛みをとって『楽なように』最期の時を過ごしていただきたいと思います。

 

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