「看取り」か否か?


或る90代男性が、『脳梗塞』後に「飲み込み」が出来なくなりました。
一時的に栄養を外から入れる方法として、鼻から管を通して、胃に栄養を送る【経鼻胃管】という方法がありますが、本人がこれを嫌がって抜いてしまいます。
ご家族は胃に穴を開ける【胃ろう】や、首から心臓近くまで管を通す【中心静脈カテーテル】を入れることには反対です。
そうなると、腕からの点滴だけでは水分中心なので栄養は殆ど入りません。そのまま「看取り」になります。
この様な理由から、当院へ「看取り」のために転院されてきたのです。

woman eating sandwich with cheese and green vegetables onion

今日は、『脳梗塞』後の「看取り」についてのお話しです。

これまでの経過

この方は、1ヶ月前までは施設に入居していました。多少の『認知症』はありましたが、ほぼ自立した生活が出来ていました。ところが、急に「飲み込み」が悪くなって『誤嚥性肺炎』を起こしてしまい、救急搬送された病院で診て貰うと『脳梗塞』が判明したのです。

『脳梗塞』のリハビリ

通常、『脳梗塞』発症から3週間は、急性期といって集中的に治療を行います。そして3週間から6ヶ月は回復期といって、専門のリハビリ病院で「リハビリ」を行うことが一般的です。
『脳梗塞』は脳の血管が詰まってしまって、脳の組織が死んでしまう病気です。詰まった場所によって症状は異なりますが、体の片側が動かなくなる運動麻痺や、しびれなどの感覚麻痺、しゃべりが上手く出来ない構音障害などを起こすことがよくあります。(以前紹介した「脳卒中はじめの症状」をご参照ください)

ところが、一旦失われてしまった機能も、その後の「リハビリ」によって、完全とまではいかなくても、ある程度は回復することが分かっています。
最終的に、麻痺などの障害が固定するのは6ヶ月程度と言われています。

今後の見通し

この方の場合には、発症から1ヶ月ですので、これから回復期リハビリを行う時期です。まだ、リハビリによって機能回復する見込みが充分あります。
ご家族に、なぜ回復期リハビリ病院への転院を拒否したのか質問すると、入院先の病院からはそう言った説明は無かったとのことでした。

一時的な【胃ろう】と永久的な【胃ろう】

ご家族は【胃ろう】は造らないと決めています。徐々に衰弱して口から食べられなくなった時に【胃ろう】を造って生かされるよりは、自然な死を選びたいとの思いからだと思います。

ところで『脳梗塞』の影響で、一時的に「飲み込み」が悪くなっている時には、口からだけでは、どうしても栄養が不足してしまいます。
そこで、一旦【胃ろう】を造って栄養を入れながら、並行して口から食べられるように訓練を行うことは良くあります。そして、最終的には【胃ろう】を抜いて、普通に口から食べられるようになり、元と同じ生活を送れるようになるのです。

このような、一時的な【胃ろう】があることを納得のうえで【胃ろう】を拒否しているのかは不明です。

加齢や『癌』などの病気の悪化によって、回復の望みが無い時に「看取り」となります。
回復の見込みがある場合には、適切な治療を行うことが当然です。

「看取りか看取りでないのか」の区別は、常に慎重であるべきと思います

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