施設に入りたくても入れない
訪問診療を行っている方で、自宅での生活をしたいと思っている方が沢山います。しかし、中には施設に入りたいと思っていても入れなくて、自宅に居る人もいます。
今日は、ある高齢の女性のお話です。
背景
ご主人を10年ほど前に亡くしていて、息子さんと一緒に生活されています。息子さんは、まだ働ける年代ではありますが、特に仕事をしていません。介護をしていればそれも仕方がないとは思いますが、介護には余り積極的ではありません。男性には良く見られる事ですが、オムツや下の世話は全くしようとしません。例え、どんなにオムツが汚れていてもノータッチです。
生活費はどうしているのかといえば、親の年金が頼りです。
この方は、もともと足が不自由で、車椅子への移乗にも介助が必要です。排泄はオムツです。デイサービスを入浴の為に週2回利用していますが、疲労が大きいようで、これ以上の回数増は本人が望みません。ヘルパーは1日2回、朝と夕にオムツ交換に入ります。本当はもう少しヘルパーを入れたいところですが、介護保険の限度額を超過してしまいます。
施設に入るほうが楽で快適な生活が出来るので本人も入所を希望していますが、お金がネックになります。施設の費用を年金で賄うと、息子さんの生活が成り立たなくなるのです。
親子共倒れ
以前、「介護離職」のお話ををしたことがあります。介護離職をしてしまった後に、親が亡くなってから、50歳代になって新たな仕事を見つけることは困難である為、どんなに大変でも離職することなく「介護休暇を利用する」などで、乗り切ることの必要性をお話ししました。
この息子さんにも、働くことが出来ない事情があることでしょう。ただ、将来1人になってしまえば、介護離職者以上に世間は冷たく、生活の目処は立たないことでしょう。息子さんの生活保護を取る方法もありますが、自宅があればそれも困難です。
親子共倒れになってしまいます。
現状維持
そんな訳で、本人にとっては施設に入る方が快適な生活が送れると分かってはいても、自宅での不都合な生活を継続するしかありません。今後、全身状態が悪化するような出来事が無ければ、生活を変えることは困難です。
高齢で一人の生活も不都合がありますが、家族が足かせになる場合もあり得るのです。