食べることは生きること


ある90歳代の方が『誤嚥性肺炎』で入院となり、治療を終えて約1ヶ月で退院となりました。
「肺炎は良くなりましたが、食べられなくなったので栄養の点滴を毎日1000mlしています。退院後も毎日点滴をよろしくお願いします。」と病院からの紹介状にあります。

woman eating sandwich with cheese and green vegetables onion

今日は、食事についてのお話しです。

食べるとは

食べることは、単に栄養を体の中に入れるだけではありません。
食べることは、ひとつの大きな楽しみですし、生きる上での力になります。
食欲は、人間が本来持っている欲望の中でも大きな位置を占めるものです。

絶食することで『肺炎』になる?

食事をとらなくする【絶食】が、『肺炎』を起こす一つの原因とも言われています。
外科的手術を受けた人は、以前は数週間の絶食が普通でしたが、現在では早期に食事を開始する事が良いとされています。
『肺炎』で入院した場合にも食事が出来るか否かを評価して、出来るだけ早期から食べること、ベッドから体を起こすことが、早期回復、早期退院につながるとも言われています。

食べられなくなったら経管栄養or点滴?

食べられなくなった時には、飲み込む力が残っているのか否かの評価を、言語聴覚士と共に行います。
そして、食べる可能性が残っているのであれば、食べるための支援を行います。
具体的には食べられるような形状の食品を工夫すること。口の中の環境を整えること。
水分がむせて飲めなくなりますので、【とろみ】をつけて水分をとってもらうようにします。
食事も【刻み食やペースト状の食事】等、その方の飲み込む力に合わせて工夫します。

鼻から胃までチューブが入っていて、1日1,000キロカロリー程度の栄養が入っている場合には、お腹が空かず口から余り食べる気が起こりません。状況によっては、栄養を減らしてみる或いは一時的に中止して、食欲が出るかどうかを見極めることも必要です。

もちろん、点滴も必要な時はあります。しかし、必要な点滴量を、口から飲み喰いする量と照らし合わせて調整する必要があります。
高齢者に1日1000mlの点滴を毎日行っていると食事が出来なくなる可能性が高くなるのです。

再度食べられるようになる?

唾液が常に喉のところでゴロゴロ言っていて、吸引が1日に何回も必要な場合には、飲み込みは難しいかもしれません。しかし、吸引の回数が1日に数回程度であれば、口から食べることをトライしてみてもいいかもしれません。
【誤嚥】をおこす可能性はありますが、再度食べられるようになる可能性があります。

まとめ

以前、100歳を超えたある女性の家族が、どうしても食事をさせてあげたいと希望されて、【誤嚥】も覚悟の上で、食事を続けた例を紹介させていただきました。(『話す・聞く・食べるのプロ 言語聴覚士』参照)

食べることは、単に栄養を体の中に入れるだけではありません。
食べる行為自体が、『生きる大きな力』になっていると思います。

安易な点滴、経鼻栄養は慎むべきと考えます。

食べることは生きること

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