がん末期 最期はどこで過ごす?
自宅で「親や配偶者の最期を看取る」と、決心するのは次の2つの場合です。
- 老いて心身が徐々に衰える、老衰の場合
- 急な病状の悪化進行があり、有効な治療法が無い場合
がん末期の状態は、2つめに該当します。
本日は、がん末期で自宅看取りを決断するまでの流れについてお話しします。
がんと宣告されてからの時間
がんと宣告されてから、亡くなるまでの時間(予後)は、本人の体力、がんの種類、がんの発生した場所、進行度などによって変わります。
『膵臓がん』の場合は、発見された時点で既に進行していることが多く、予後は非常に短く数ヶ月の事もあります。一方、『前立腺がん』などでは進行が遅いものが多く、予後は比較的長く数十年の場合もあります。
全てのがんの5年生存率は約60%というデータがあります。つまり、大ざっぱに言って、がんと分かってから5年以内に4割程度の人が亡くなる計算です。
がんの治療
これも『時間』の場合と同様に、本人の体力、がんの種類、場所、進行度によって治療の選択肢は変わります。一般的には外科的手術、抗がん剤治療、放射線治療などがあり、単独で、或いは組み合わせて行います。
いずれの治療も本人にとっては大きな負担となりますので、『がんである事を伝えた上で治療する』ことが一般的になっています。
治療の中断から最期の場所の選択へ
がんによっては完治する場合もありますが、がんの進行が早い場合は、もはや有効な治療が無い状態が訪れます。このような時には治療が中断されます。
そして、最期をどこで過ごすのか選択を迫られます。
具体的には、ホスピスという緩和ケア病棟に入院するか、自宅あるいは施設に戻るかです。
自宅看取りを選択できる条件
昭和30年代までは、自宅で亡くなることが一般的でした。それ以降は、徐々に病院で亡くなることが当たり前となり、現在では8割以上の方が病院で亡くなっています。
そんな中で病院から家に連れて帰り、最期まで見届ける決断をする事は非常に困難なことです。
それが可能になるのは、病院の主治医から次のような説明が必要であると考えます。
- 家に帰ることも一つの選択肢であると提示されること
- 24時間いつでも対応出来る医療機関(在宅医)が存在すること
- 家でも麻薬をつかった疼痛コントロールなどが可能であること
- 家族の介護負担を軽減する各種サービスがあること
しかし、現実的には病院主治医は在宅診療の経験が無くて、具体的なイメージを持っていないために、積極的に質問しないと答えてくれない事もあります。
本人の家に帰りたい希望があるならば、ぜひ、病院主治医に「家に帰らせたい」と、伝えてください。
地域によって差はありますが、訪問診療を行っている医療機関が家の近くにあると思います。そこに事前に相談することで、家で看取る情報を得ることが出来ると思います。
自宅にもどってから(予告)
本人・家族が自宅での最期を選択して、家に戻った場合には、われわれ在宅医の出番となります。病院では治療優先ですが、家では本人優先です。
在宅診療では3つのキーワードがあります。
- 楽なように
- やりたいように
- 後悔しないように
です。
自宅看取りの具体的内容については、また別の機会にお話しします。