顔がゆがむ・腕が下がる・ろれつが回らない


ある日のこと、施設の職員から電話が入りました。
「入居者の一人が前日の夕方から左腕の動きが悪くて力が入らない。車椅子で座っていても左に傾く症状が出現した。」と往診依頼がありました。
これだけ聞いてあなたは何を考えますか?

Human brain in abstract background

そう、脳梗塞です。今日は脳梗塞のお話です。

訪問時の様子

診察に訪れると、口の端は左が下がっており、右左でバランスが悪く歪んだ顔になっていました。
普段診ていない患者さんでしたので、施設の職員に確認して貰いましたが、いつもの顔とは違っているようでした。

両目を閉じて、掌を上に向けた状態で両腕を挙げて、そのままの姿勢で10秒動かないようお願いしました。すると、3秒としない間に左腕が下がってゆきました。
本人に聞くと、少し呂律が回りにくいとの事でした。
以前お話しした脳卒中のはじめの症状FASTの『Face顔』、『Arm腕』、『Speech言葉』が全て該当します。
この方は、血圧も普段より20mmHg高めでした。

救急病院へ

右の脳梗塞の疑いが強く、救急病院へ紹介となりました。

脳梗塞を起こした時の対応

脳梗塞を発症した時は、時間を記録して直ぐに救急車で病院へ運ぶ必要があります。FASTのTですね。

年齢が若くて条件が整えば、脳の血管に詰まった血栓を溶かす治療(血栓溶解療法)を行うことが出来ます。
ゴールデンタイムは発症から4.5時間です。もし上手く溶けたら麻痺は全く残りません。
この方は高齢者であり、発症から1日以上経過しているために、残念ながら麻痺は残る可能性が高いと思われます。
それでもやはり早く病院に行く必要があります。脳梗塞直後に脳出血を起こす可能性が高いからです。

梗塞だけであれば命に関わる事は比較的少ないですが、出血となると命にかかわります。
したがって入院、点滴をしながら、しばらく様子をみる必要があります。
また早期にリハビリを開始することにより、一旦麻痺して動かなくなった手足の機能が回復する可能性も高くなります。

私の母は脳出血で倒れて左半身麻痺となりました。始めは車いすに座っていることも出来ないくらいでしたが、リハビリのお陰で杖をついて歩けるくらいまでに回復しました。
脳梗塞と脳出血は要介護になる一番の原因です。

脳梗塞の見分け方FASTを再度確認しておいて下さいね。

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