死因は老衰


人が亡くなると医師は死亡診断書を発行します。
この書類がないとご遺体を移動させることが出来ませんし、埋葬もできません。
医師は死亡確認をしたら速やかに死亡診断書をかかなければならないと法律で決まっています。(医師法第19条第2項)
死亡診断書には死因の病名を記載する必要があります。例えば胃癌や肺炎などです。

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なんらかの病気にかかり、それがもとで亡くなった場合には、もちろんその病名を記載することになります。しかし高齢によって徐々に体の機能が低下し、結果として亡くなった場合には、特定の病気が見当たらないことがあります。
このときには『老衰』と記載することになります。

病院で勤務している医者は、『老衰』という病名を死亡診断書に書くことはほとんどないと思います。
病院は、基本的に病気に対して治療を行う場所です。治療が上手くいかなかった『敗北』の結果として死があります。したがって、病気が無いのに人が亡くなる死ということを、そもそも認め難い雰囲気があります。

一方、在宅医が自宅で看取りを行う場合には、死因『老衰』の記載が多く見られます。
在宅診療の場においては、看取りの段階では、もはや病気の治療を行うことはありません。家族と共に最期をどのように過ごしてもらうかを考えて看取りをします。その結果、人間の自然の経過による死亡と判断される場合には、堂々と『老衰』と書きます。

人はいつか必ず亡くなります。今日生まれたばかりの赤ちゃんもそれは同じです。
人は、たとえ病気が一切なくても年老いて最期はなくなるのです。一説には120歳以上は生きることができないとも言われています。
『老衰』で亡くなることが出来ることは、天寿を全うしたということであり、すばらしいことです。
これ以上の死はないのではないでしょうか。

これからも『老衰』による看取りを行ってゆきたいと思っています。

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