痛みのコントロールについて
痛いのはみんな嫌ですよね。
痛みがあると、人は冷静になれません。将来のことや、これからやりたいことなどを考える為には、まず痛みなどの苦痛を取り除くことが先決です。
本日は痛みについてのお話です。
痛みとは
国際疼痛研究学会(IASP)では、『実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う,あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される,不快な感覚かつ感情体験』と、定義しています。つまり【痛み】は単純な反射的感覚ではなく、心の動きや情動を伴った苦しみ、不安など、ヒトが【感じる】体験だと考えられています。
痛みのメカニズム
痛みはどうして起こるのでしょうか。
ヒトは痛みを感じることで、自分の体を正常に維持し、細菌などの敵から自己を守っています。
『糖尿病』の人で足を切断したしまった人の話を聞いたことがあると思います。『糖尿病』になると痛みの感覚が鈍くなります。足に何らかの傷ができても痛みが無いため気がつかず、そこから細菌が侵入繁殖してしまいます。糖尿病の人は元々傷が治りにくいこともあって、最終的には足が腐ってしまう壊疽の状態になり、切断することになるわけです。また、『心筋梗塞』では強い胸部の痛みがあることが普通ですが、女性や高齢者、『糖尿病』の方は痛みが余り感じられず、病院受診が遅れて命取りになるケースもあります。
痛みを感じることが、体の維持には必要なのです。
痛みの原因の大部分は、傷から末梢神経を通じて脳へ伝えられる痛みです。これを『侵害受容性疼痛』と言います。その他には、痛みを伝える神経そのものに問題が生じて起こる痛みの『神経障害性疼痛』や、神経や体には問題が余りないのに発生する痛みの『心因性疼痛』、中枢神経そのものがやられてしまう『中枢性疼痛』があります。
痛み止め
一般的な痛み止めは『侵害受容性疼痛』に効果があります。
痛み止めの種類は、主に3種類があります。
- 医療用麻薬
精神的・身体的依存性がある、強い鎮痛作用を持つ薬。手術やガン性疼痛の鎮痛治療薬として使用されます。 - 非麻薬性鎮痛薬(NSAIDs)
脳への働きは弱く、鎮痛作用と、熱を下げる作用があります。また、炎症を抑制する働きがあります。 - 局所麻酔薬
痛みを伝える神経線維の興奮を抑制して、痛みを取り除きます。
普通に痛み止めと言えば2番目のNSAIDsを指すことが多く、商品で言えばロキソニン、ボルタレンなどです。これらは、痛みを起こす物質を抑えることによって鎮痛効果を発揮します。副作用としては胃や十二指腸などに障害がでることです。
『がん』による痛みを抑える場合には1番目の医療用麻薬を使うことになります。
医療用麻薬は正しく使う限りは、精神的な問題を起こす心配はありません。副作用の『便秘』に対しては下剤などを使うことである程度コントロール出来ます。
医療用麻薬は、痛みを強力に抑えることができるため、上手く使うことで残された時間を有効に過ごしていただくことが可能となります。
具体的な医療用麻薬の種類や使い方については、また別の機会にお話しします。