死後の争い
人は死ぬ時には、何も待って行けません。
それは、どんなにエライ人やお金持ちであっても変わりません。
今日は、死後の争いについてのお話しです。
相続
人が亡くなると、その人の持っていた財産は、一旦凍結されて相続の手続きに入ります。
民法によって法定相続人が決まっており、生前に遺言書を作成している場合であっても、法定相続人には遺留分を受け取る権利があります。
遺産分割協議を行って相続されますが、そこで様々な争いが起こることは良くあることです。
自宅看取りの方のお話し
私たち医療者は、お亡くなりになるまでのサポートをさせていただいていますが、時に相続問題にも関わることがあります。
ある高齢の方で、外来通院が不可能になってきたので、当クリニックで訪問診療が開始されました。
介護者は、隣に住んでいる娘さんでした。患者さんは、既に口からは殆ど食べることが出来ない状態でした。ご家族は、自然な形での看取りを希望されていました。
伺いはじめて2,3日目のことです。「相続の為の遺言書を、弁護士同席で作成しました。」と聞きました。
この時点では、挨拶や呼びかけにうなずくなどの意思表示をされていました。
この方は、若い頃から不動産関係の仕事をしていて相当な財産があるようでした。
その後、1週間程で亡くなられました。
裁判
それから、数ヶ月が過ぎた頃、弁護士から書類が届きます。
介護をしていた娘さんと、遠方の息子さんが遺産を巡って裁判を起こすことになったそうです。
そして、死の直前に作られた遺言書の有効性が焦点になっているようでした。
弁護士からは、「遺言書作成当時に本人の意思判断の能力があったのか」という質問書でした。
人の能力を客観的に判断することは不可能です。ただ、その時の客観的な状況を書いて返送しました。
その後の経過は不明です。
「児孫のために美田を買わず」とは西郷隆盛が残した言葉と言われています。
あの世や墓場には、財産は持って行けません。
残された人の為になるならまだしも、争いの元になるくらいなら、財産など残さない方が良いのではないかと、一般庶民は思ってしまいます。