初期研修医に期待すること


1ヶ月間、都会の大学病院の初期研修医が、地方の私たちのクリニックに「地域医療研修」を目的として来ています。毎回、研修のはじめに、「将来は何科に進むのか、この研修で何を学びたいか」などを話して貰って、「目標設定」を行なっています。

今日は、その時に出て来たお話です。

老衰の看取り

ある初期研修医が、「大学病院の救急外来では、高齢の方で、どう見ても看取りでしょうと思われる患者が、時々救急車で運ばれてくる。何故、自宅で看取ることが出来ないのだろうと感じていました」と言います。

「その原因はどこにあるのだろうか」と問うと、しばらく考えて、「病院と在宅の医療者の間の連携が取れていないのではないか。大学病院から退院して自宅に戻る際に、治療も出来ないし高齢で、家族も看取りを希望していると紹介状を付けていても、急変で救急に運ばれてくることがあって、在宅の医療者にその事情が伝わっていないのではないかと感じた」と言います。
そのようなケースは私たちのクリニックでは、あまり考えにくいのですが、所変われば事情が変わるのかもしれません。

「では、医療機関の間での連携が取れると、自宅看取が可能なのか、自宅看取りには何が必要だろうか」と更に質問しました。すると、じっと考え込んでしまいました。

この1ヶ月の研修の間に、その答えが見つかることを期待しています。

末期がん患者の看取り

初期研修医では、『がん』の告知を行なったり、末期がんの方を看取る機会はほとんどありません。私たちのクリニックでは、末期がんの方が、常に数人は居て、毎週誰かの「看取り」を行なっています。
その「看取り」の時には、大学病院で良くあるように、「モニターがその患者の心停止を知らせてご臨終の宣告をする」ということがありません。
その人がこれまで住み慣れた空間の中で、「家族と共に迎える最期」がどのようなものか、彼らにはぜひ経験して欲しいと思います。

初期研修医は、ひと月でまた、都会の病院に戻ります。おそらく、在宅診療に進む人は皆無でしょう。しかし、病院勤務の医師が、「在宅ではどのような医療が行われているのか、家での看取りとはどのようなものか」を経験して肌で感じて貰うことが、とても大切だと思っています。

在宅のことをイメージ出来る病院医師が、1人でもふえることを期待しています

 

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