自室で「いい湯だな」


長い入院生活から退院して家に戻ったときに、お風呂に入りたいと思います。
風呂好きな人で、入院するまで毎日入っていた方は尚更でしょう。

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今日は、『悪性リンパ腫』という血液のがんを発症されて一か月入院し、高齢のため治療できず家に帰ってきた人の話です。

患者背景

80歳代女性です。1か月前よりお腹が膨らんで、食事が摂れなくなり入院となりました。検査したところ、『悪性リンパ腫』の診断がつきましたが、高齢であることから積極的治療は困難でした。このため1ヶ月入院期間の後に、自宅退院となりました。
入院前までは普通に食事を摂れていましたが、退院時はもうほとんど食べられなくなり入院中は点滴を受けていました。
退院日に初めて自宅に訪問診療に伺いました。
『悪性リンパ腫』の為に腹水でお腹は大きく膨らんでおり、両足はむくみでパンパンでした。意識は呼びかけに答える程度です。急速に『悪性リンパ腫』が進行しており、余命は短い印象でした。
同居の家族は娘さん一人です。
「体に水分が溜まりお腹や足が腫れている為、これ以上点滴することはかえって本人を苦しませることになります」と説明して、点滴中止を提案したところ納得されました。
残された時間は短いことを【看取りのパンフレット】を使って説明しました。
その時、娘さんがふと洩らします。
「母はお風呂が好きで、入院前までは毎日入っていました。この1ヶ月の入院中はお風呂に入れませんでした。何とかお風呂に入れてあげたいのです。」それなら、と訪問入浴サービスを早速入れることになりました。

訪問入浴サービスとは

介護保険で利用できるサービスの1つに訪問入浴があります。自宅で入浴が出来ない方に、自室まで専用の湯船を運び入れて入浴して貰うサービスです。通常2,3名の看護師や介護士が入浴介助を行います。
入浴の前後に利用者の状態をチェックします。
熱があったり、血圧が安定していない場合には中止となることもあります。

入浴実施

2日後に、入浴の予定が組まれました。入浴日の午前に訪問診療に伺ったところ37.5度の微熱がありました。熱が上がらないよう早めに解熱剤の坐薬を使いました。
お昼になって、診療所に電話が入ります。「訪問入浴に来ましたが、熱が38度以上あるので体を拭くだけにします」と。直ぐに娘さんに電話を代わって貰いました。
「今日入らないと、もう入れなくなるかも知れません。熱が高い時には確かに危険は伴いますが、午後から訪問看護師が伺いますし、何かあれば直ぐに対応しますので入浴しましょう」とお話ししました。
娘さんも入浴を希望されたので、訪問入浴スタッフに再度状況を説明して、入浴することが出来ました。

午後から伺った訪問看護師の報告では、幸い熱は37度台に下がっており、本人は「気持ち良かった」と上機嫌だったそうです。また、娘さんも、とても喜んでおられたそうです。

お風呂には特別の癒やし効果があると思います。訪問入浴は、とても嬉しいサービスですね。

自宅で「いい湯だな」は最高です

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