笑顔は自分を守る?
『前頭側頭葉型認知症』については、以前お話をしたことがあります。この病気は、一般的には性格異常や反社会的行動が前面に出ることが多く、日常生活を送ることが困難になります。
現在、訪問診療に伺っている方でこの病気の方が居るのですが、この方にはそういった困る症状は無く、ただただ一日中、黙ってじっとしています。介護拒否もありません。されるがままです。
今日は、「本能的な笑顔」のお話です。
訪問診療の様子
ある日の訪問診療に伺った時のことです。今日は「何時もより少し表情が緩んでいるかな」と思いました。すると、奥さんが言います。
「もっと前までは、一日中笑顔でした。言葉が無くなってからも、ずっと笑顔でした。今は、その笑顔も無くなり、ただじっと見つめるだけになっています。でも、一見無表情にも見える中でも、良く話かけてくれる馴染みの人が相手だと、僅かに口角が緩んで表情が柔らかくなるのです。」
笑顔の理由
この方は、病気になる前は余りお話をするタイプでは無く、どちらかと言えば無口で、笑顔も見せない方だったようです。それが、病気になって以来、何が嬉しいのかずっと笑顔だったそうです。写真を見せて貰いましたが、確かに嬉しそうな「いい顔」をしています。
「きっと、笑顔でいないと誰からも構って貰えないと考えたのかもしれません。笑顔だと色々な方に話しかけられて、デイサービスでも人気者でした。」
赤ちゃんの笑顔が可愛いのと同じで、本能的に外敵から身を守るための方策なのかもしれないなあと思いました。
ちなみに、この奥さんも本当に大変な苦労をされていると思いますが、いつもいい笑顔です。
笑顔を見せるのにお金はいりません。始めはぎこちなくても、慣れたら自然に笑顔ができるようになります。
笑顔で人を引き寄せることが出来るなら、是非身につけたいですね