高齢者の睡眠について


高齢の方の訪問診療の時に、いつも聞くことのひとつに「睡眠」があります。

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今日は、眠りについてのお話しです。

ヒトの眠り

眠りには、浅い眠りである急速眼球運動「(レム)睡眠」と、脳が眠っているという深い眠りの「ノンレム睡眠」があります。そして、ヒトの睡眠中は、まず最初に、眠りの深さから4段階(「ステージ I 」から「ステージ IV 」)に分けられている「ノンレム睡眠」が起こり、次に「レム睡眠」に移行します。このサイクルを、周期90分で、4,5回程反復すると、標準的な眠りが取れていると言われています。

年齢によって変化しますが、「成人では7時間前後の睡眠が必要」とされていています。そして、「睡眠が短いと肥満や高血圧や糖尿病などになりやすい」と言われています。

高齢者の訴え

高齢者の訴えの多くに「よく寝られない」とか「明け方よく目が覚める」と言われる事があります。
睡眠に関する訴えがあるときには、就寝時間と起床時間の両方を聞くようにしています。
ほとんどの方は就寝時間が早く夜20時前後で、中には18時に寝る方もいます。一方で起床時間は、朝日とともに朝6時前後の方が多い印象です。この間、全て寝ているとしたら10時間前後は睡眠時間という事になります。

お年寄りであれば、昼間の活動も減っていて、うとうとする時間もあるでしょうし、更に夜間まで10時間も眠るということは困難です。
当然、途中で目も覚めますし、朝早くには完全に頭は覚醒しています。

夜は布団に入る時間をもう少し遅くするか、または、朝もう少し早くから床から出るかして、布団に横になっている時間を減らすなどの時間調整が必要だと思います。

排尿障害による不眠

また、夜間の「おしっこ」で目が覚めるかたもいます。
この場合は『前立腺肥大症』や『神経因性膀胱』などが考えられるため、薬を調整することもあります。

「『脳梗塞』の予防に」と、夜に多量の水分を摂っている方も中には居ると思います。正しい事ではあるのですが、その水分量が多過ぎるのかもしれません。
そういった方には、夕食後の水分を摂ることを、少し控えて貰うことも必要です。

睡眠薬について

睡眠薬は、危険が多い薬です。
高齢者の場合には、眠っている途中で目が覚めて、トイレに行くことが多いのですが、この時に睡眠薬の影響で、足元がふらついて転倒する方もよくいらっしゃいます。
また、ほとんどの睡眠薬には習慣性がありますので、飲まないと寝られない様になる恐れがあります。

睡眠薬は、入院中など、環境変化によって寝つけない時などに、短期間使用することは有効ですが、漫然と飲み続ける薬ではないのです。

よい睡眠のためには

次の3つの点に注意するだけでも、改善することがあります。ぜひ試してみてください。

  1. 昼間は出来るだけ活動的に動いて、昼寝は極力控えること
  2. 就寝時間と起床時間を考えて、早い時間から布団に入らないこと
  3. 夕食後の水分はとらないこと

何か、興味のある事を見つけて、「早く起きたい」「◯◯をしたい」と、【起きている時間】を大切に思えることが増えれば、睡眠の悩みも減るのではないでしょうか。
近くにいる人の言葉かけや提案で、良い眠りを取れるかもしれません。

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