プライマリケアの専門医
ある学会の理事長が 、25年前と現在、そして25年後の医療というお話しをされるのを聞く機会がありました。
今日は医療側のお話しですが、皆さんの健康・介護にとっても関連があると思いますので取り上げます。
車を例に例えて、25年前にはハイブリッド車もなく、電機自動車もなかった。当時からみたら現在のエコカーは予想以上に進歩している。それと同様に、今後25年を考えてもグーグルなどが開発している自動運転車や石油燃料を一切使わない車が当たり前になっているのかもしれません。車産業はそれにむけて対応してゆかなければなりません。
医療も同様で、25年後には今では想像できない治療や仕組みが出来ていることでしょう。医療業界もそれに向けた対応が必要です。
学会の役割は今をどうするかではなく、未来の変化に対応できる人財の育成にある。
専門医に偏重した医師集団では、高齢多死社会で複雑化する健康問題に対応することは困難であり、プライマリケアを担う医者が今以上に必要である。
プライマリケアを専門にしようという若い医師が、自分のアイデンティティーを確立できるような、臓器別ではない新たな専門医を作ること。これこそが学会が取り組む課題である。
このような内容のお話しでした。
一般の方には、何を言っているのかよく分からないかも知れませんね。
若いうちは体に不調が起こった時には、その症状にあった診療科を受診して専門医に診て貰うことが普通です。これは、問題が一つであるから一つの診療科で診て貰うという事なので全く問題はありません。
ところが、高齢になってくるとどうでしょう。膝や腰が痛くて整形外科、目が見えにくくて眼科、乾燥肌で皮膚科、高血圧で循環器内科、頻尿で泌尿器科と言うように、たくさんの診療科にかかっている方がいます。
こうなると通院するだけでも大変ですね。しかも一人で通えなくなった場合には介助する家族の負担も大きいです。
受診をすると、それぞれの専門医は自分の管轄の病気に対して治療を行い、ほとんどの場合、薬を出します。すると、薬を山のように飲まなければならなくなります。
薬は大なり小なり副作用があります。複数の薬を飲むと、薬同士の相乗効果で副作用がより一層多くなることがわかっています。
高齢者は、慢性的な病気をたくさん抱えているのが特徴です。その場合、たくさんの科を受診することは、経済的にも、時間的にも、患者の健康にとっても良くありません。
その解決策は、どんな問題でも診ることが出来るプライマリケア専門の一人の医者が診て、バランスを考えながら最適な治療、処方をおこなう事にあります。
こうすることで、時間的なロス、経済的なロスが抑えられ、何よりも患者にとってメリットがあるのです。
今までは、プライマリケアを行う専門医は存在せず、人間のそれぞれの臓器を診る専門医だけでした。
現在、少しずつではありますが、プライマリケアの専門的なトレーニングを受けた医者が増えています。
学会の役割としては、
「プライマリケアを専門にしようと考えている若い方が仕事をしやすいように、
自分は専門医ではないからとコンプレックスを持つことのないように、
社会的にも専門のないレベルの低い医者と誤解を受けないように、
新たなひとりの人間を丸ごと診ることが出来るプライマリケアの専門医をつくらなければいけない」という話です。