映画が好きなんです
今日は、たまたま見学で伺ったクリニックでの訪問先の患者さんについてのお話しです。
患者さんの状況
70代男性で『胃癌』で胃を全て取っている方で、その後、腹膜やリンパ節に転移再発されたという事です。
認知症の症状は無く、しっかりとされています。
大きな病院で抗がん剤治療を行っており、患者さんはその病院と主治医をとても信頼しています。
今後も病院では通院治療を受ける予定ですが、在宅診療も開始されました。
この方の一番の困り事は、便が少しずつしか出ない事で、その上いつも便が残っている感じがすることでした。
診察では左下腹部に腫瘤が触れるため、大腸に転移していて通過障害が起こっているのかもしれません。
楽しみ
「楽しみは映画を見ることで、いまでも映画館に通っています。新旧和洋なんでも観ます。」と映画の話を、とても嬉しそうにしてくれます。毎日の楽しみで、一日に何本も観ることがあるそうです。
今後の見通し
今のところ食べる、排泄する、着替えるなどの日常生活動作は自立していますが、今後急速に悪化する可能性もあります。
今後も、抗がん剤による治療の為に数週間入院しては、退院して自宅療養、という生活を繰り返す予定です。
抗がん剤による副作用は、今のところそれほど苦にはなっていないようです。
しかし、現時点であとどれくらい生きられるのか、主治医の判断を聞いていないので不明ですが、余り長くないのではと感じました。
医療者は積極的に治療を行って、患者も一緒に頑張るという事は、病気を治す上では有効です。しかし、医者はその病気が治癒出来ないと分かっている場合には、積極的に治療をする意味を患者にじっくりと説明して、患者自身が【自分はどうしたいのか】選択する必要があると思います。
医者は【積極的に延命治療を行う】選択肢と、【治療は行わずに、痛みなどの苦痛のみを取り除く緩和医療を行う】選択肢を、患者に提示しなければならないのです。
その為には、死が確実に迫っていること抜きには話すことは出来ません。医者と患者それぞれが死と向きあう事によって初めて可能になります。
この方は映画を観ることが楽しみという事なので、趣味の映画を楽しめる穏やかな時間を、出来るだけ長く過ごしていただきたいと思いました。