漢方薬との付き合い方
漢方薬というと一般の薬と比べて安全なイメージはありませんか?
漢方薬は100を越える生薬(しょうやく)の中から、有効と思われるものを組み合わせて作られています。
その中には鉱物や植物等で、薬として使われていないものも多く含まれます。
しかし、薬の成分と同じものも結構入っています。したがって、漢方だから無条件に安心、安全というわけではありません。
漢方薬にも、もちろん副作用はあります。
有名なものでは、よく腓返りの症状で出される『芍薬甘草湯』という漢方があります。この中の『甘草』という生薬は、血圧を上げる効果がありますし、血液中のカリウム値を下げると言われています。
外来に来た患者さんで、今まで安定していた血圧が突然上昇したので慌てて降圧薬を増やそうと考えた時に、話をよく聞いてみると、「最近明け方に足がつるので別の医療機関から漢方を処方されました。」という話が聞かれることがあります。
漢方薬で肝臓に影響が出るという副作用が取り沙汰されたこともあります。
副作用はありますが、漢方薬はうまく使えば非常に役に立つ薬です。
どんな時に有効かというと、何となくはっきりしない症状で、診断がつかないような場合です。このような時にでも漢方は試すことが出来ます。
これは、漢方は西洋医学的な診断にとらわれることなく、症状で出す薬だからです。
漢方的な症状を『証』といいます。証の捉え方としては、陰陽や虚実や表裏などの仰々しい分類があります。これらを正しく判断し、適切に処方することがもちろん大切ではありますが、漢方専門医ではない一般の医者、ましてや一般の方には少々敷居が高いというのも事実です。
漢方には基本的な使い方があります。
1つには漢方同士は一緒に飲まないことです。長年の経験から最適な生薬の配合比として出来た物が、それぞれの漢方薬です。複数の漢方薬を同時に飲むことは、体内で生薬の配合比が変化してしまう可能性があります。中には複数飲むことにより効果が更に増す組み合わせもありますが、これは専門家の領域だと思います。反対に、漢方以外の薬との併用は問題ありません。
2つめは、どうしても飲みにくい場合、使ってみて腹痛など不調が出る場合には直ちに中止する事です。飲みにくいという事は、その漢方薬があなたの体に合っていない事を意味します。調子が悪くなるのもそうです。また、通常は2週間使って効果が無ければやはり中止し、別の漢方に切り替えます。
これら基本的な使い方を理解した上であれば、症状に対して候補となる漢方薬の中から自分に合った漢方を見つけてゆけばよいと思います。
少し余談ですが、『葛根湯』という漢方薬があります。ツムラであれば①番です。風邪には葛根湯と宣伝文句もありますので、かぜ症状全般に効くとお考えの方が多いと思いますが、これは間違いです。葛根湯は熱が出始めの段階で咽頭痛や頭痛があるときには有効ですが、熱が出て汗をかくようになったらもう使えません。したがってせいぜい2日程度しか飲めない薬です。肩こりに対して長期に飲む場合はありますが、風邪では長期には飲まないことを覚えて置いて下さいね。