グリーフケア 能面のあるお家


80代男性が亡くなって四十九日が済んだ頃に『グリーフケア』にうかがいました。
以前『お家での看取り』で紹介させていただいた方です。

今日は、その時のお話しです。

この方は2,3年前から徐々に歩けなくなり、今年に入ってから急に食事量が減ってしまいました。近くのかかりつけ医が高齢のために閉院したのを機に、訪問診療が始まった方です。
かかわりだしてから亡くなるまでの期間は、およそ1ヶ月でした。
奥さんの趣味は面打ち。能で使う面を作ることです。(この写真も奥さん作です)

雰囲気が伝わるよう、奥さんが話した内容をそのまま記載します。

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亡くなるまでの様子

昨年の年末から食事がとれなくなり、ときには無理に食べさせるようなこともしました。
3月末に、かかりつけ医が閉院となったのがきっかけで、訪問診療に来て貰うようになりました。人と人の出会いが大切だと思っています。
3月に入って食べたものを毎日記入していました。毎日の食事が徐々に少なくなっていくのを記録してゆくのはつらいことでしたが、徐々に「もう食事がとれなくなっているのだ」という現実を受け入れられるようになりました。最期は『看取りのパンフレット』の通りになりました。

夜中の1時位には手をバタバタと動かしていました。手足が冷たくなっていましたが、汗をかいていました。その後しばらく、うとうととして、3時頃ふと目覚めた時に、何とはなく亡くなったと感じました。隣にいた次男に確認して貰ったら息が止まっていました。背中はまだ温かかったので、あわてず、その後は朝までゆっくりと家族の時間を過ごしました。孫も朝になると起きてきて、6時になったので先生に電話しました。

葬儀について

葬儀は『家族葬』で行いました。バイオリンとピアノの生演奏で感激しました。注文して自分の好みの花をたくさん飾っていただきました。いい式になったと思います。
『家族葬』を知ったのは何気なく見ていた新聞広告です。亡くなる1ヶ月位前に、普段は直ぐにかたづけてしまう広告が、その時は何故かふと気になって別にしておいた物です。亡くなった後に、「さてどうしようか」と思った時に出てきました。必要な時に必要な情報が入ってくるように思います。

棺には、今まで作った能面のうちの1つを納めました。自分が昔着ていた着物の帯から作った袋に入れて棺に納めました。あの世でも身近に居る、と思っています。
遺影は60歳位の若い時の写真を使いました。最後のやせこけた顔は余り思い出したくありません。
骨壺に入れる時に骨が随分大きいと感じました。これまでの食事に気を配っていたのが良かったのだと前向きに考えました。
亡くなって介護する必要が無くなり正直ほっとした面もあります。また、食事を無理に食べさせる辛さが無くなり楽になりました。

現在の様子

親が亡くなった時とは受け止め方が違うように思います。夫婦は『紙切れ1枚のつながり』と言われていますが、40年も連れ添って親以上に長い付き合いだと色々と感じるところがあります。
夫が居なくなって家の中の空気が変わったような気がします。まだその空気に慣れない感じもあります。
食欲はあります。夜は時々目覚めることがありますが、その後また寝られます。

四十九日の喪があけましたので、面打ちを再開する予定です。

看取りを行っての感想

最期まで家で看ることが出来て、やりきったという感じです。
今後、知り合いの方で介護に直面して困っている方には、『訪問診療と言う選択肢』がある事を伝えていきたいと思っています。

この奥さんは悲しみは抱えながらも新しい生活をスタートしていました。

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