転倒か?安静か?
高齢者の骨折の原因で、最も多いのは転倒です。今まで何度か転倒について、お話ししたことがあります。今日は、転倒を繰り返している施設に入所している人のお話です。
施設での転倒事例
施設側でも、転倒は起こさないようにと細心の注意を払ってはいても、これはどうしても避けられない問題です。高齢者でもあり、認知機能も衰えている場合は、注意を促しても危険のある行動を繰り返してしまいます。
ある認知症の高齢女性は、床に落ちているゴミが気になってしまい、ガムテープで埃を取るのが日課です。気がつくと床に顔を近づけて作業をしているので、少しのことでバランスを崩し、頭から転倒してしまいします。しかし、上手く受け身が出来るのでしょうか。この方は幸いにも大きな怪我も無く過ごされています。
また別のパーキンソン病の高齢女性は、突然バタンと倒れてしまいます。パーキンソン病の症状の一つで、姿勢を保つことが出来なくなるからです。この方にも少し認知症があります。動く時には「必ず誰かを呼んで下さい」とお願いしていますが、聞き入れずに一人でトイレなどに行ってしまい転倒してしまうのです。
一度などは顔から床に転倒して、下顎骨を骨折し、差し歯をしている前歯が折れてしまう大怪我になりました。口腔外科の先生が上手く手術して、傷はほとんど目立たない程に回復しましたが、やはり小さな転倒は繰り返しています。
転倒防止策
介護士や看護師などの施設職員の方は、転倒防止の為の「センサーマット」の設置や、こまめな声かけを行うなどの対策を取っています。
在宅医としては、転倒を引き起こしやすい薬剤について見直します。睡眠薬や、血圧の薬、おしっこの薬が転倒の原因となることが良くあるからです。
転倒か、ベッド上安静か?
転倒が問題となるのは、「骨折を起こすと、その後寝たきりとなってしまう」ことです。転倒の危険性を考えると「ベッドから動かないでいる」のが一番です。しかし、ベッドで安静にしていると高齢者の場合は1週間で「寝たきり」になってしまいます。
転倒し骨折することで「寝たきり」となるか、ベッド上安静で「寝たきり」となるかの違いだけです。
私は、「転倒の危険性」を家族に説明して理解いただいた上で、細心の注意を払いながらも「出来るだけ本人に動いて貰うようにすることが大切」だと思っています。