「家に帰りたい」


旅行から帰りました。わずか10日間家を留守にしていただけでも、懐かしい感じと「帰ってきたなあ」という安堵感が沸き起こってきます。
これが、入院生活が数ヶ月続いた後であれば、その感慨もひとしおでしょう。
今日は、“家に帰ること”についてのお話です。

病院の生活はアウェイゲーム

私はサッカーが好きで、良くテレビ観戦をします。サッカーでは、チーム所在地で行われる「ホームゲーム」と、敵地に乗り込む「アウェイゲーム」があります。慣れたグランドでサポーターの声援も熱い「ホームゲーム」は当然有利になる一方、「アウェイゲーム」ではいつもと違う環境で不利になります。
病院での生活は、「人生のアウェイゲーム」のようなものです。入院中、本人は寛ぐことなど出来ません。食事や入浴ひとつとっても、自由になりません。夜は慣れないベッドに横になって、夜中も色々なランプが枕元で点灯したり、必要な事とはいえ看護師の見回りなどもあります。とても寛ぐことが出来ない「非日常の生活」です。
入院中のストレスと言うと相当なもので、環境の変化について行けない高齢者では、一時的に『認知症』が進んだり、夜間におかしな行動をとったりする『せん妄』になることがよくあります。高齢者ばかりか若い方でも『せん妄』になることがあります。

入院中は早く退院して家に帰って、例えば「畳の上で手足を伸ばして寝っ転がったり、好きなお酒やペットと一緒に暮らしたい」と思うことでしょう。

入院体験

私は8年前に心臓手術を受けました。休みの関係で12月中旬から入院して、術後は3週間リハビリを行う予定でした。ところが、入院生活があまりに耐えられず、「正月を病院で過ごすなんてあり得ない」と無理にお願いして、2週間ちょっとで早期退院しました。
家に帰っても、少し歩いては休みの状態で、咳が胸に響いて激痛が走るので枕を抱えてなるべく胸に振動が無いように慎重に咳をするなど、とても普通の生活とは言えませんでした。ただ、そんな状態であっても「家がやっぱり良かった」ことを思い出します。

「早く帰りたい」

病院で勤務している医療者は、病院がホームです。「家に帰りたい患者の気持ち」を、本当の意味で理解することは、自身が入院経験が無い時には中々難しいと思います。
その人の状態によっては、退院が困難なことは勿論あって、希望がそのまま通るとは限りませんが、患者の側から「早く家に帰りたい」気持ちを伝えることは悪いことではありません。
きっと、理解ある医者であれば、話を真摯に聞いてくれる事と思います。

アウェイにはアウェイの戦いがあるように、入院中の窮屈な状況から早く解放されるように、患者の側から「意思表示すること」もまた必要です。

家はまさに「ホーム」です。早く帰れるに越したことはありません。

 

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