代替医療にすがる気持ち
『がん』をはじめとして、現代の医療では治療することが困難な病気を患った人が、色々な【代替医療】を試す話を時々耳にします。
一口に【代替医療】といっても漢方鍼灸治療などある程度広く認識されているものから、科学的にはどうかというものまで沢山あります。不治の病いの患者やその家族が、「なんとか助かりたい、良くなりたい」と思う気持ちで、藁をもすがる気持ちであることは充分理解できます。
しかし、通院なり入院が必要ですと、体力的には相当負担がかかります。もし遠方であれば、移動手段や宿泊も考慮しなければなりません。また、ほとんどの場合に保険適応は無く、自費診療になりますので、非常に高額な費用がかかります。
もともと限られた貴重な時間をつかい、時間的、肉体的、金銭的負担をかけて行うことが果たして良いのか考える必要があると思います。
今日は、代替医療についてのお話です。
ある親子の話
母親が『がん』になり放射線治療や抗がん剤治療を行いましたが効果なく、緩和治療を勧められました。本人は60代とまだ若く、がん発症後にネットでいろいろ探して【免疫療法】があることを知りました。【免疫療法】を実施している先生が地方まで講演に来ていて、これまで2回受講していました。病院では治療出来ないと言われた今、【免疫療法】を受けたいと希望しています。
本人の希望?家族への思いやり?
この【免疫療法】については、余り詳しいことは知りません。ネットで調べると、保険が使えない生物学的製剤を使って治療するようです。その費用は数百万円から数千万円です。近くで行なっているところはありませんので、都会まで行く必要があります。
本人に【免疫療法】を受けたい理由を尋ねると、「私の母は60代で亡くなったので、私はとても寂しい思いをした。今、私が死んでしまえば娘が悲しむから生きていたい」と答えます。
娘さんにも同じように尋ねると、「母が希望するので受けさせたい。母の生きる支えになっていますので、この治療を受けないとなれば、生きる望みを無くすのではないかと心配です。」と言います。
「母は娘のために、娘は母のために」と【免疫療法】を希望しています。
現状
余命はあと数ヶ月程度と病院主治医から言われています。現在はほとんど1日寝て過ごし、トイレは何とか自分で行けるくらいの状態です。日によって体調も食事にもムラがあります。腹痛があり、医療用麻薬を使ってどうにかコントロールしている状態です。
もし【免疫療法】を受けるとなれば、遠方まで移動することだけでも大変です。場合によっては移動中あるいは滞在中に亡くなる可能性もあります。
本心と本人の選択
どうしても確認したいのは、本人の本心です。「回復するという僅かな可能性にかけて、死のリスクも承知の上で、本当にこの治療を選択するのか」です。娘のためと言われると、娘さんも困ってしまいます。「本人自身が、自分のためにどうしたいのか」です。
近い将来に迫った「死」を受け入れられず、何とかしたいと考えることはあっても不思議ではありません。この場合「死」に直面した時に、「あれをしておけば良かった」という後悔が残るかもしれません。
今できることには、限りがあります。治療を優先するのであれば、自宅でゆっくりした時間を過ごすことは出来なくなります。
以上を全て理解した上で、本人が自分のために【免疫療法】を選択するのであれば反対する理由はありません。
私たちは全力でサポートします