いつ入院するか?


『脊髄小脳変性症』、あの『1リットルの涙』で有名になった病気を患っている70歳代女性の患者さんが、2日前から鼻水と咳が出て呼吸困難になり早朝往診となりました。
本日は、在宅患者の入院についてのお話しです。

iStock_000004695453Medium

入院の判断

自宅で療養している方が体調を崩した時に、在宅医は家で出来る範囲での治療をするのか、或いは入院加療をするのかを判断する必要に迫られます。いつ入院するかを判断するのは容易ではありません。

優先順位

入院を考える優先順位は次のようになります。

  1. 自宅での治療では病気の進行を止められない場合
  2. 介護者の負担が大きくなる場合、(例えば痰を引く吸引回数が多くなる時など)
  3. 本人と家族が入院に同意する場合

若い人の場合は、1. の病状だけで入院を判断できます。
これは入院治療する事によって、再び元の生活に戻ることが暗黙の内に了解されるからです。

しかし、高齢者が入院の場合は、退院時に入院前の状態で戻ってくる保障はありません。ほとんどの方が、入院の度に、全身状態が悪くなってゆきます。
また、90歳を超える超高齢の方などでは、病院での精査・治療を希望されず、「自宅で安らかに最期を迎えたい」と本人もご家族も思っている事があります。
そんな訳で、入院の判断には、3. の『本人・家族の同意』が重要になります。

今回の事例

今回往診した患者さんは、娘さんがひとり介護をしています。ご本人は僅かな口の動きだけで意思表示するので、娘さんとしかコミュニケーションがとれません。

病状

病状は鼻水、咳、痰はありますが血液検査では肺炎を疑うほど悪くはなくて、風邪かなという程度です。
しかし、もともとの病気によって呼吸が不安定であるために、痰によって呼吸状態が悪くなっていました。

吸引処置が必要

このため、吸引を数多くする必要があります。

受け入れ病院の問題

松山市の場合は、夜間、休日は『かかりつけ病院』があっても、救急当番病院への搬送が原則となっています。その日は金曜日だったので、週末や夜間に更に状態悪化して入院となってしまうと救急当番病院への搬送が予想されました。

しかし、この方は脊髄小脳変性症という神経難病がベースにあるために、救急当番病院では対応が困難なので、入院となれば『かかりつけの病院』に行く必要があります。

こういったことから、早急な入院をお勧めしました。

同意まで

しかし、娘さんも患者さんも入院を渋ります。
これまで何度も入院経験がありましたが、その度に、不快な思いをされていたのかもしれません。また、入院となれば、2ヶ月程度の長期におよぶ事もその原因かもしれません。

一旦引き上げて、『かかりつけ病院』の入院受け入れの確認を取った上で、再度娘さんと電話でお話ししました。
娘さんは入院に同意し、その後本人の説得に30分ほど時間はかかりましたが最後は納得されて入院する事となりました。

いつ入院するか?
患者・家族にとっても、医者にとっても、悩ましい問題です。

Follow me!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

前の記事

病院での最期